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健康経営×DEIの効用――経営理念が充実すると業績がよくなる

DEIの重要性と企業経営(3)健康経営でDEIを推進する

山本勲
慶應義塾大学商学部教授
概要・テキスト
どのようにすればDEIを実現していけるのか。一つのヒントとなるのが「健康経営」である。はたして健康経営を目指している企業にとって、DEIの視点を取り入れることが企業利益につながるのか。また、従業員のウェルビーイングという面ではどうなのか。いくつかの研究事例によって、健康経営×DEIの効用を検証していく。(全4話中第3話)
時間:08:05
収録日:2025/05/22
追加日:2025/08/22
≪全文≫

●健康経営の取組みとROE


 (前半では)DEIの重要性をご説明しました。ここからは、どのようにすればDEIを実現していけるのかということへ移っていきたいと思います。

 必ずしも直接的なDEI研究ではありませんが、1つのヒントとして、健康経営をどのように進めれば、企業にとっていい状態になるのかを調べた研究を紹介したいと思います。これもやはり日経スマートワーク経営研究会による分析になります。

 ここに書いてあるように、従業員の方に対して、健康経営に関する企業の取組みがあるか・ないかということに加えて、それがある場合には、活用されているのか・いないのか。このような3択で質問をしてみました。

 その回答状況に応じて企業の業績(ここではROE)を比較してみたのが、この棒グラフになります。

 左端はトータルの結果で、健康経営に関する全般的な制度・取組みについて、(色の)濃い棒はそれがないと答えたり、あるいは取組みがあっても十分に活用されているとは限らないと答えているグループです、(色の)薄い棒のほうは、取組みがあって十分に活用されていると従業員が評価している企業と考えてください。

 このように企業を2つに分けてみると、ROEは、健康経営の取組みが十分に認知され、評価されている企業で大きくなっていることが分かります。

 ROEに対する影響だけではなく、労働生産性、すなわち付加価値生産性に対しても同じような傾向が見られます。健康経営に対する取組みが評価されている企業ほど生産性が高い結果になっています。

 次に、似たようなことを企業のデータと対比させます。企業は、健康経営に取組んでいると答えていても、従業員は取組みがされていない、評価されていないと答えている可能性がある。すなわち両者の回答にギャップがある可能性があります。このギャップの大きさによってもROEや生産性が違うのかを見ると、やはりギャップが大きい企業(色の薄い棒グラフ)ほどROEが低く、生産性も低いという関係が出てきています。

 ここから何がいえるかということです。健康経営を実施している企業は多いと思うのですが...
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