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DEIの重要性と企業経営
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
経営ビジネス
山本勲(慶應義塾大学商学部教授)
認知的DEIが進んでいない場合、人口統計的DEIに注目することも大事である。特に男女の多様性という観点から注目すべきは「女性活躍推進」。その効果については「差別の経済学」という分野があり、これは女性を登用することで業績や利益率がよくなるプロセスを逆説的に説明する考え方である。最終話では、その詳細についてデータを検証しながら、女性活躍推進とDEIの関係を解説する。(全4話中第4話)
時間:13分17秒
収録日:2025年5月22日
追加日:2025年8月29日
収録日:2025年5月22日
追加日:2025年8月29日
≪全文≫
●人口統計的DEIも重要――女性活躍推進と「差別の経済学」
以上、DEIについてお話ししてきて、DEIの中でも認知的DEIが大事だという話がメインになっていたと思います。では、認知的DEIではない人口統計的DEIのほうは重要ではないのかというと、そういうわけでもなく、そちらもやはり大事です。
特に認知的DEIがそれほど進んでいない、あるいは日本のように――日本では「多様性」というと、どうしても男女が注目されるのですが――まだまだ女性活躍推進が必ずしも進んでいないというような状況では、認知的DEIを進めていって、男女のDEI、多様性を追求するような方向性も大事ですが、そこにかなり時間がかかる可能性があります。むしろ、人口統計的な男女の多様性に注目して、そこを少し進めることによってDEIが重要であるということが浸透し、結果的に認知的DEIが広がっていくという方向も大事ではないかと思います。
それから男女の観点でいくと、先ほど管理職女性比率や役員女性比率が必ずしも業績にプラスの影響を与えないという結果が出てきていましたが(第1話目)、ここをもう少し深掘りしてみると、また違う姿が見えてくる可能性がある。そういうことから、女性活躍推進について注目してみたいと思います。
私が専門とする経済学では、ベッカー教授が「差別の経済学」という分野を打ち立てました。この差別の経済学で指摘されている女性活躍推進の効果は2つあると解釈することができます。
やや逆説的ですが、1つの効果は、仮に女性が市場で差別的な扱いを受けていて、不当に女性の賃金が安いという状況があるとしたら、そういう状況を逆手にとって女性を多く登用した企業のほうが人件費は安く済むので、かえって業績がよくなるのではないかということが指摘されています。
不当に安い賃金で女性が働いているという状況を、経済学では生産性に対して賃金が安すぎるというように置き換えます。仮にこういう差別が市場にあるとしたら、女性は生産性の分だけ賃金を払わなくても済むと捉えることができます。そうすると、生産性対比で見た人件費は女性のほうが安いので、女性を登用したほうが人件費を削減できて、業績や利益率がよくなるといった状況があるのです。
ですから、差別が生じている状況では、女性を...
●人口統計的DEIも重要――女性活躍推進と「差別の経済学」
以上、DEIについてお話ししてきて、DEIの中でも認知的DEIが大事だという話がメインになっていたと思います。では、認知的DEIではない人口統計的DEIのほうは重要ではないのかというと、そういうわけでもなく、そちらもやはり大事です。
特に認知的DEIがそれほど進んでいない、あるいは日本のように――日本では「多様性」というと、どうしても男女が注目されるのですが――まだまだ女性活躍推進が必ずしも進んでいないというような状況では、認知的DEIを進めていって、男女のDEI、多様性を追求するような方向性も大事ですが、そこにかなり時間がかかる可能性があります。むしろ、人口統計的な男女の多様性に注目して、そこを少し進めることによってDEIが重要であるということが浸透し、結果的に認知的DEIが広がっていくという方向も大事ではないかと思います。
それから男女の観点でいくと、先ほど管理職女性比率や役員女性比率が必ずしも業績にプラスの影響を与えないという結果が出てきていましたが(第1話目)、ここをもう少し深掘りしてみると、また違う姿が見えてくる可能性がある。そういうことから、女性活躍推進について注目してみたいと思います。
私が専門とする経済学では、ベッカー教授が「差別の経済学」という分野を打ち立てました。この差別の経済学で指摘されている女性活躍推進の効果は2つあると解釈することができます。
やや逆説的ですが、1つの効果は、仮に女性が市場で差別的な扱いを受けていて、不当に女性の賃金が安いという状況があるとしたら、そういう状況を逆手にとって女性を多く登用した企業のほうが人件費は安く済むので、かえって業績がよくなるのではないかということが指摘されています。
不当に安い賃金で女性が働いているという状況を、経済学では生産性に対して賃金が安すぎるというように置き換えます。仮にこういう差別が市場にあるとしたら、女性は生産性の分だけ賃金を払わなくても済むと捉えることができます。そうすると、生産性対比で見た人件費は女性のほうが安いので、女性を登用したほうが人件費を削減できて、業績や利益率がよくなるといった状況があるのです。
ですから、差別が生じている状況では、女性を...
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