本質から考えるコンプライアンスと内部統制
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「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
國廣正(弁護士・国広総合法律事務所パートナー)
ビジネスに関わる者であれば必ず耳にしたことがあるであろう「コンプライアンス」という言葉。一般的には「法令遵守」と訳されることが多いが、そのような理解ではその本質を見落としてしまう。2019年のリクナビ事件とかんぽ生命事件の実例解説を通じて、レピュテーション・リスクという観点からコンプライアンスの本質を明らかにする。(全6話中第1話)
時間:10分22秒
収録日:2023年1月16日
追加日:2023年5月3日
≪全文≫

●コンプライアンスを「法令遵守」と捉えることの問題点


 こんにちは。弁護士の國廣です。今日はコンプライアンスについて、お話をしたいと思います。

 いわゆるコンプライアンスというのは「法令遵守」のことだと言われることが多いのですが、そのような考え方ではリスクの管理はできません。

 まずコンプライアンスという言葉のイメージは、一般的に良くないイメージだろうと思います。何かいろいろと面倒くさいルールがたくさんあって、あれをやってはいけない、これをやってはいけない、というように、細かいルールを押し付けられるというイメージです。あるいは、いろいろ面倒な手続きを仕方なしにやらなくてはならないといった、「やらされ感」を感じさせる非常に悪いイメージがあるのではないでしょうか。

 他にも、企業不祥事が起こったとき、カメラのフラッシュを浴びながら社長が頭を下げて言う「今後はコンプライアンスを」といった決まり文句にもこの言葉は使われます。このように、コンプライアンスは面倒くさい、あるいは暗いイメージの言葉だと一般的には考えられています。

 実際、多くの企業ではそのようなイメージになってしまっています。ですが、本来のコンプライアンスとは、不祥事を防止するためのリスク管理のことなのです。「コンプライアンス=法令遵守」といった考え方ではそのリスク管理に失敗してしまうということについて、例を挙げながらお話したいと思います。


●法令に違反していなければそれでいいのか――リクナビ事件を検証


 まずは2019年に起きた「リクナビ事件」についてご紹介します。

 リクナビ事件というのは、就活サイト「リクナビ」を運営する株式会社リクルートキャリアが、就活生の内定辞退率を算出し、本人の同意なく企業に販売していたとして大きな問題になった事件です。

 例えば、ある大学生がAという会社に入りたいと思っていて、仮に本人にその適性があり本来は入社できたはずであっても、この学生の内定辞退率が80パーセントだと事前に分かっていたら会社側は採用しない、といったことも考えられます。このように学生の人生に重大な悪影響を及ぼすことになりかねないとして、この事件はマスコミなどでも大きく取り上げられました。この時、リクナビ自体も批判されましたが、同時にそのような名簿を購...

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