本質から考えるコンプライアンスと内部統制
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
顧客情報持ち出し事件があぶり出した2つの企業内課題
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(5)情報セキュリティと顧客情報持ち出し事件
経営ビジネス
國廣正(弁護士・国広総合法律事務所パートナー)
個人情報を取り扱う際、企業は当然、細心の注意を払わなければならない。そのため、情報の取り扱いに関する教育や研修が広く一般に行われているが、教えられていることが細かな知識ばかりで、本質を欠くものであっては危機管理として不十分である。では本質とはなにか。大事なことは2つあると國廣氏は指摘する。今回はある顧客情報持ち出し事件を事例に、情報セキュリティと内部統制の問題について考える。(全6話中第5話)
時間:8分29秒
収録日:2023年1月16日
追加日:2023年5月31日
≪全文≫

●顧客情報持ち出し事件と日本企業にありがちな性善説の発想


 第5回は、情報セキュリティについてお話したいと思います。

 これは情報セキュリティの一般論についてではなく、事例研究の1として実際にあった事例をモディファイしながらご説明し、その問題点を明らかにしていきます。

 それでは、仮にA社としましょうか。社員がだいたい3000名くらいの通信販売会社なのですが、当然、多くの顧客情報を持っています。住所、氏名、電話番号、職業、年収、勤務先、取引履歴などの情報です。

 このお話の登場人物はXという人間なのですが、この人はシステム部の課長で、情報管理システムを作っています。このXが、ギャンブルで身を持ち崩して、すごい借金を背負って、日々の生活に窮していると。

 ところで、システム部というとやはり重要な部署ですから、その会社ではシステム部員のみがパスワードで入室できる、セキュリティ管理がなされている部屋、作業区域がありました。ここで顧客情報の作業を行っているというわけです。

 ところが、このXはお金に困っていましたから、この名簿(個人情報)を売ればお金になると考えました(インターネットを見ると「名簿買います」といった怪しい業者がいますが…)。Xは毎日業務でそこに立ち入っていますから、あたかも通常業務のようにそこで顧客の個人情報を抜き取り、これを業者に売却した、という単純な事件です。

 これはもうかなり前の事件ですので、最近はそういうシステム部のところの作業ルームは、ものすごく厳密になってきてはいるものの、(根本的なことは)やはりそんなに大きく変わらないと思います。

 当然、これ(Xの所業)はばれることになります。なぜかというと、お客さんから「個人情報が流出しているのでは」と電話がかかってきたからです。こうして事件は発覚し、Xは摘発されました。

 あとで調べれば、すぐ分かりますよね。ログを見れば、分かる。実際にはXは別な人間のパソコンをこっそり使って、それを行ったのですが、それは調べれば分かることです。

 さて、そこでこのA社は情報管理についての教育や研修をちゃんと実施していたのかを調べてみました。すると、Xは「個人情報保護法研修」というものをちゃんと受けていました。しかも、Xは研修で講義を受けた後、卒業テストで100点を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
ウォーレン・バフェットの成功哲学(1)「世界一の投資家」の実像
世界一の投資家ウォーレン・バフェット…賢人と呼ばれる理由
桑原晃弥
日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)膠着する日本経済の深層
日本経済の行き詰まりをもたらした2つの大きな理由とは
西山圭太
ブランド戦略論をどう読むか(1)ブランドとは何か
ブランドとは何か…企業の本質的な部分に与えるインパクト
田中洋
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭

人気の講義ランキングTOP10
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎