●GAFA規制に至る批判やマイナス側面
これまで聞いていただいたことについて、そのままにしていいのだろうかという問題が今、世の中でどんどん出てきています。それを振り返っていきたいと思います。
GAFAは1990年代から2000年代にかけて、飛躍的な発展を遂げました。一番若い企業は、まだ上場して10年も経っていないほどですが、プラットフォーマーのネットワーク効果で、市場シェアが圧倒的になりました。また、テスラのように莫大な将来価値を見込んだ投資家の関心を集め、企業価値が破格の水準に達した企業もあります。
そうした輝かしい側面の一方、多くの競合企業が買収されたり、いろいろな競争により排除されていきます。それから、高額手数料を課せられるアプリメーカーからの声もある。アップルなどは基本的に、アプリを出す場合3割の手数料を課しますし、アマゾンも出店企業から高く取ります。さらに買収で成長の芽を摘まれてしまうハイテクベンチャーなどからも、いろいろな批判が出てきています。
それからもう一つ、フェイスブックなどがそうですが、ユーザーから膨大な個人情報を調達して、勝手に加工して販売していくのはプライバシー侵害ではないかという指摘があります。これは、競争の抑制、イノベーションの阻害などのマイナスの側面があるということで批判が募っているわけです。
2010年代の後半から、彼らはヨーロッパやアメリカの司法当局、取引当局から法的な追及を受けるようになりました。この後、その経緯と焦点を展望して、問題点を指摘したいと思います。
●フェイスブックと個人情報流出問題
まずフェイスブックを取り上げましょう。
2018年3月17日、イギリスのガーディアン紙の報道で、イギリスのデータ分析会社ケンブリッジアナリティカが、フェイスブックのユーザーデータ5000万人分を不正取得したという大変な報道がありました。しかも、そのデータが2016年の大統領選でトランプ陣営に有利に働くように利用された可能性があるということで、大問題になりました。皆さん、記憶に新しいところだと思います。
この個人データの不正流出に関して、個人データ管理にいったいどういう問題があったのか。そもそも個人データ保護の思想が弱いのではないか、欠けているのではないかというザッカーバーグ批判が高まったわけです。さらに、個人データが政治的に利用される危険があるということで、SNS産業は社会的に非常にリスキーな存在ではないかという危機感が高まったのでした。
いったいデータがどのように不正流出して、政治利用されたのかについて、少し詳しくお話ししたいと思います。
2014年、ケンブリッジ大学の心理学教授で、ロシア系のアメリカ人アレクサンドル・コーガン氏という人が、フェイスブックと学術目的で正式に契約を交わし、フェイスブックのユーザーにも目的をお伝えして、アンケートで27万人の回答を集めました。「いいね!」と言った人たちを集めたわけですね。
その後、コーガン氏は、27万人分のデータをフェイスブックとの契約に違反して、ケンブリッジアナリィティカ社に横流ししてしまう。ではなぜ27万人が8700万人になるのかというと、27万人の人たちは、みんなSNSの「いいね!」でつながっていますから、手繰っていくと8700万人になっていくわけです。
8700万人となればビッグデータですから、これをプロファイリングすると、非常に正確な結果が出てきてしまいます。この個人情報が選挙用の心理操作に利用された可能性があるというので、大問題になりました。
●「いいね!」のはらむ危険性と史上最大の制裁金
8700万人分の「いいね!」とフェイスブック投稿情報を合わせてプロファイルすると、個人属性別の嗜好性が見えてきます。その中には政治志向性も含まれていて、トランプを支持するのかしないのか、ということも見えてくるわけです。さらに、支持させるにはどうしたらいいかということまで出てきてしまいます。
こうしたフェイスブック投稿情報は状況を示す情報なので、コンポーネント変数に当たります。説明変数や独立変数ともいいますが、これを与えると、その人が政治的に誰を選ぶのかが見えてくる。こういう非常に危険なものが見えてくるということです。
2018年4月にアメリカの議会で公聴会があり、ザッカーバーグ氏が呼ばれます。そこで「サイトの悪用について十分な手を打てていなかった。私の過ちだ」と謝罪はしたものの、さらに言い募って「しかし、われわれの規約では、利用者は個人情報を管理できると明記している。だから個人情報は会社ではなく、個人のもの...