ChatGPTの開発、普及によって、AI産業を牽引する企業となった「OpenAI」。その設立には、イーロン・マスク、ピーター・ティール、リード・ホフマンといった「ペイパルマフィア」と呼ばれる人たちが関わっていた。しかし、その後、紆余曲折あり、窮地に立たされたOpenAIを救ったのがマイクロソフトだった。いったい何があったのか。サム・アルトマンの「人類に貢献する安全なAIを開発する」という信念とビジネスの両立を目指したOpenAIが今に至るまでの経緯を解説する。(全8話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫
●OpenAI設立につながったラリー・ペイジのディープマインド買収
―― 次にOpenAIの設立背景というところになってまいります。
―― 最初に年表で見たように、イーロン・マスクがここで出てくるということですね。
桑原 そうですね。本当にイーロン・マスクが先に声をかけたのか、サム・アルトマンがやったのかというのは非常に微妙です。イーロン・マスクの本だとあくまでマスク始動です。ただ、どうもいろいろな人が絡んでいるのだなということで、最初にまず2012年にデミス・ハサビスです。この人はチェスの天才的なプレーヤーで、チェスのチャンピオンを破ったAIを作った人なのですけれど、こういった人が作った「ディープマインド」という会社がまず当時ありました。
イーロン・マスクもめざといですから、500万ドルを出資しています。ただこれを紹介したのは、ピーター・ティールです。イーロン・マスクとピーター・ティールは「ペイパルマフィア」の両巨頭です。イーロン・マスクはグーグルの創業者であるラリー・ペイジに(話を)するわけですけれど、この時からマスクはAIというものに対して、「必要だし、すごいけれど、危険でもある」と考えていました。
これがイーロン・マスクの独特の考え方で、コンピュータもそうなのですけれど、案外人間が大事だという考え方なのです。人間を危険にさらすものはダメなのだということで、そのあたりがイーロン・マスクらしくないようなマスクらしいような、よく分からない話なのです。
―― テンミニッツTVでも、(以前)桑原先生にイーロン・マスクの講義をしていただいていています。もともとは本当に理念的な人ですね。宇宙に人が移住できるようにしなければいけないのだ、電気自動車でなければ地球が危ないと。非常にビジョン、理念から走っていくのですね。
桑原 おそらくAIとかコンピュータの可能性を知り尽くしているから、余計に危険性も感じるのでしょうね。
邪悪なほうにいくかどちらにいくかということで、イーロン・マスクとラリー・ペイジでは、AIの考え方がだいぶ違っていたところに、ラリー・ペイジがディープマインドを買収してしまうわけです。これがOpenAIの設立につながるいちばん大きな分岐点だと思います。
●グーグルの独占状態を変...