「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠
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上質なスローメディアを教材に経営のセンスを磨く
「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠(6)スローメディアと向き合う
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
これだけスマートフォンが普及し、すぐに最新の情報にありつけるようになったファストメディアの時代には、情報自体はコモディティ化しており、差別化の要因とならない。むしろ今こそ、過去の本や新聞記事などスローメディアに向き合うことで、ある現象が起こる理由や背景に思いをめぐらせることが重要となる。その上で求められるのは、事実だけではなく、その裏にある本質を見極めて経営のセンスを磨いていくことだ。(全6話中第6話)
時間:6分33秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年5月29日
≪全文≫

●ファストメディアの時代、情報のコモディティ化が進む


 われわれは、つくづく「ファストメディア」の時代に生きているなと思います。いつ、どこでも、最新の情報があふれています。ただし、肝心な「なぜある現象が起こっているのか」という論理が希薄になっています。これが「ファストメディア」だと思うのですね。

 受け手のほうは隙間時間にスマートフォンで、数多くのページを次から次へ遷移しながら、断片的にすぐにパッと目につく情報を吸収していきます。その結果、文脈理解がますます希薄になります。一方で、情報の供給側であるメディアも、オンラインではどれだけ読まれているかというページビューが可視化されるため、当然商業メディアなのでそれを最大化するインセンティヴを持ちます。そのような色気をもって編集をするようになると、多くの人が注目するバズワードを用いるようになります。

 人々が最も関心を寄せるのは恐怖ですので、「仕事がなくなる」などの恐怖を煽るような記事の作成に明け暮れるようになります。こうした需給が、悪い意味で合致して、悪循環が生まれていると思います。

 情報はコモディティ化しきっており、情報を持っているだけでは、その他大勢とほとんど変わらない状況です。だからこそ、逆・タイムマシンに基づけば、本質を引き出すセンスがますますこれから稀少になっていくといえるのです。逆にいえば、経営者やビジネスパーソンにとって、逆・タイムマシン経営論のような考え方が、差別化の武器になると考えております。ウォーレン・バフェット氏はつくづくうまいことをいっています。「われわれが歴史から学ぶべきは、人々が歴史から学ばないという事実だ」というのです。その通りだと思います。


●「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という思考法で経営センスを磨く


 われわれは改めて「スローメディア」と向き合う必要があると思います。いつの時代も読書、よい本を読むことが王道です。スローメディアの王道は本なのです。「新聞雑誌は寝かせて読め」という話の背景には、かつてはファストメディアだった古新聞古雑誌の記事が、時間を置くだけで、上質なスローメディア、論理を考えさせる教材に変容するという事実があります。半年前の新型コロナの記事を、ぜひ今ご覧になってください。早くも良い味を出しています。まだ引ききっていませんが、潮が引いた後で、...

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