「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠
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『逆・タイムマシン経営論』が訴える「同時代性の罠」とは
「逆・タイムマシン経営論」で見抜く思考の罠(1)同時代性の罠を乗り越える
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
「逆・タイムマシン経営論」とは何か。孫正義氏が有名な「タイムマシン経営」という言葉があるが、その逆を考えてみたらどうかというのが楠木氏の考えである。近年、IT技術の発展に相まって、メディアから出される情報は指数関数的に増大しつつある。しかし、そうした情報に特有のバイアスがかかっていることを意識しなければ、「同時代性の罠」に絡め取られてしまう。この罠を回避するためにどうすればいいか。(全6話中第1話)
時間:8分30秒
収録日:2020年12月7日
追加日:2021年3月22日
≪全文≫

●連綿と積み重なる過去の情報の中で危険性を増す「同時代性の罠」


 皆様、平和にお過ごしでしょうか。楠木建でございます。本日はこのような機会をいただき、まことにありがとうございます。

 以前からある本を書きたいと強く思っていました。コロナ禍で暇になったため、集中して取り組むことができ、最近こちらの『逆・タイムマシン経営論』という本を出版しました。これに基づいて、私の考えについてお聴きいただければ幸いです。

 皆さん、「タイムマシン経営」という言葉をお聞きになったことがありますでしょうか。孫正義氏が有名です。これは要するに、未来はすでにどこかで実現されているという話なのです。例えば、シリコンバレーには、最先端の技術やビジネスモデルがあります。それを日本に持ってくれば、時間的なアービトラージ(編注:取引用語でいわゆる「さや取り」のこと)を得られるというものです。

 私の発想は、その逆を考えてみたらどうかというものです。過去は連綿と積み重なっています。例えば、日々メディアから出てくるニュース、記事、言説などが、長期間にわたって積み重なっています。

 これは今に始まった話ではありませんので、過去の同じような言説を振り返ってみましょう。すると、「同時代性の罠」というものをつくづく感じます。つまり、旬の言説であればあるほど、その時代のステレオタイプ的な論調や同時代のノイズがそこにはまとわりついています。これによって情報の受け手はバイアスがかかり、判断ミスをすることが頻繁に起こっていたことに気づくわけです。


●「新聞雑誌は10年寝かせて読め」


 ではどうしたらいいか。対応策としては、「過去に遡るに如(し)くはなし」ということです。歴史に学べというと、多くの方が歴史書を読むことがあるかと思います。例えば経営史の専門家である米倉誠一郎氏は、『イノベーターたちの日本史―近代日本の創造的対応』(東洋経済新報社)という本を書いています。これはこれで大変勉強になりますが、歴史書には書き手が捉えて、自分の考えを反映させた歴史が書いてあります。

 それに対して、逆・タイムマシン経営論が注目するのは「史料」です。過去記事を史料として考えてみましょう。例えば、『日経ビジネス』を取り上げてみましょう。お読みの方も多いと思いますが、創刊50周年です。今から44年前の1976年に、「日本的...

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