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バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある

バブル世代の現実とこれからの生き方

江上剛
作家
情報・テキスト
バブル世代はバブル経済に恩恵を受けた世代ではなく、じつはバブル崩壊でとても苦労した世代である。その苦労してきた人生を僻みに思うことなく、自分にとって本当にやりたいことを求めていけば、この先の人生で精神的な充足を得られるのではないか。
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:00
収録日:2021/08/31
追加日:2021/12/14
タグ:
≪全文≫

●「バブル世代」は実は大変苦労した世代である


―― 皆様、こんにちは。本日は作家の江上剛先生に、「バブル世代」についての講義をいただきたいと思います。先生、どうぞよろしくお願いいたします。

 「バブル世代」というと、1990年前後(80年代後半から90年代初頭にかけて)に入社した世代です。現在では、おおよそ50歳を超えて、会社の中では役職定年などさまざまな局面を迎えている方々でしょう。この世代について、先生はどのようにお考えになりますか。

江上 バブル景気は1990年頃がピークとなって落ち始めます。あの頃を思い出すと、私は人事部にいて採用の応援をしていたのですが、「とにかく採用しろ」ということでした。夢があったのです。銀行は、証券、国債などいろいろな分野に人員が必要だから、「とにかく人を入れろ」と。他の銀行も、他のメーカーも、いろいろな業種がみな競争で人を採り合っていました。

 私は採用グループではなく、採用の応援を行っていたのですが、とても驚いたことがありました。10月1日だったと記憶していますが、事前にリクルーターたちが唾を付けて回っている入社希望者たちが一斉に来たのです。そして1次面接を行うのですが、私としては「あまり採用したくないな」と思う人もいる。そうした意見を言うと、採用グループ側から「とにかく採ってください」と言われて、来た人は全員採用となったのです。

 私の入社時は就職氷河期だったので、そういったことはあり得ませんでした。だから私も、「名前だけ書ければ入社できるのか」と怒ったことがあります。とにかく大量に採用しました。

 その人たちが銀行へ入社したときには、彼らにも夢があったし、銀行側も彼らの行く末のポストは無尽蔵に広がっているといった夢を描いていた時代です。

―― 当時は、日本の銀行は世界の時価総額ランキングでも上位に入る時代ですね。

江上 そうですね。今の中国の銀行のようなものです。今はもう見る影もありません。私は人事部にいたので彼らと状況は違いますが、入社してから彼らは楽しいことがなかったのではないかと思います。

―― 一気に苦しくなりました。

江上 ええ。苦しくなる。そして、新入社員が非常にたくさんいる。ある程度の規模の会社は、みな同じ状態だったでしょうが、新人が大量に入社するにもかかわらず上の人間がいないので、社員教育も十分できないのです。

 それまでは、新たに入社してくる人間が少なかったので、マンツーマンで時間をかけながら教育できました。ところが新人が大量に入ってきて、先輩がいない中で教育も十分できない。そして、「業績を上げろ」と言われているのに、世の中の景気は一気に冷え込み始めた。不良債権は次々と増え始めた。給料はほとんど上がらない。このような状態で、失われた20年、30年と言われる日本の低成長期に入ってしまったのです。

 「バブル世代」という名称は、バブルで踊ったような、とても恩恵を受けたような印象があります。ですが実際は、「バブル崩壊世代」といったほうがいいのではないでしょうか。本当に苦労された時代です。ノウハウも蓄積されることがあまりなかった。そして会社の発展を見ることも一度もありませんでした。


●50代以降は、精神的な幸福とのバランスを考えたい


江上 私は一度、ベトナムに取材に行ったことがあります。そのとき、ある大手ビール会社の社員さんが、ものすごく喜んでいたのです。彼は、「自分はバブル採用の人間なのだけれど、会社の業績が落ち込んでいるときにベトナムに行き、何もないところで1から全部つくりあげろと言われた。その責任を任された」と言って働いていました。ベトナムは、それこそバブルではないですが、とても成長していたので、働いたことに対する成果が次々と入ってくるのです。そういった人もいました。

 バングラデシュのオートバイ工場へ取材に行ったときも、「まるでバブルのように、次々に車が売れるのです」という話でした。

 考えてみると、そのように海外に出て、新興国のような経済成長している地域に行った人はいいでしょう。しかし日本国内にいた人は、(銀行などは特にそうですが)不良債権処理ばかりをさせられて今日まで来ています。そして、一息ついたかと思ったときには、もうすでに50代で、リストラ対象になっている。だから「バブル世代(バブル崩壊世代)」は、本当に苦労されたと思います。

 だけど、人間は苦労ばかりではありません。必ず次の機会にそのノウハウ、そこで培ってきたノウハウが生きる。不良債権の処理で苦労したのなら、次にその苦労が生きる場合もあるでしょう。景気の悪いところで辛抱した経験は、次の仕事やポストで生きるのではないでしょうか。

―― 折しも定年についてなど「会社人生『50代の壁』」の講義の中で、「の...
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