江戸とローマ~哲人と俳人
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
皇帝ネロへの反骨心…哲人ペトロニウスが見せた粋な生き方
江戸とローマ~哲人と俳人(3)ペトロニウスとセネカ
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
今回は皇帝ネロに仕えた二人の哲人を紹介する。『サテュリコン』を著したペトロニウスは宮廷の「優雅の審判官」と呼ばれて快楽と遊興を手解きし、セネカは政治の舵取りもする哲人として皇帝を導いた。いずれもやがて不興を買い自害を命じられるが、最期にローマの“粋”を体現したのはペトロニウスだった。(全4話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分42秒
収録日:2021年9月16日
追加日:2023年10月5日
≪全文≫

●ローマの生き方を体現したペトロニウス


本村 ローマにおいては、(第1話でお話しした)ハドリアヌスと詩人のやりとりのようなものがあったりしました。他にも、ローマの生き方そのものとしてペトロニウス(を紹介したいと思います)。彼はネロ帝時代の哲人ですが、趣味人といえばいいのか、非常に文芸や文化への造詣の深い男でした。この人の生き方などは、粋人の極みにあるのではないかというふうに思います。

――これはどういう方なのですか。

本村 彼は先ほど言ったように、ネロの時代の人です。もちろんそれなりの貴族だったので、生活の「粋」ぶりも際立っていました。いわゆる滅私奉公や仕官懸命のような、一生懸命そのために働いていい地位を得るような努力はまったくしたことがない。とにかく時間を自由に費やし、朝は寝ていて、夜はずっと飲み食いして遊ぶような生活を続けていました。

 そんな彼でしたが、周りからは非常に評価され、属州長官やコンスル(執政官)にまでなっています。ところが、そういう地位に就くと彼はピシッと役割をこなす。アフターファイブというか(夜の)時間はともかくとして、公人としての務めはきちんと果たしたわけです。もちろん空いた時間は自分の好きにつかっていたし、公職を退くと、また朝に寝て夜は遊んでいる、というようなことがいわれた男です。

 非常に趣味人で、とにかくものすごい教養人だったのでしょうね。だから、側近としていろいろな軍人を侍らせていたネロ自身が、ペトロニウスを抜群に評価していたし、どんなことが楽しいのかということについて、ネロは彼の言う通りにし、倣うようにしていたといいます。ペトロニウスがネロにあまりにも気に入られているものですから、他の側近からはだんだん妬みを向けられるようになります。


●妬みを買って讒言された『サテュリコン』の作者


本村 このペトロニウスという人はもう一つ、『サテュリコン』という悪漢小説(ピカレスクロマン)を執筆したともいわれます。これは非常に長大なもので、現在残っているのは文庫本一冊ぐらいの分量ですが、おそらくその五、六倍か、下手すると七、八倍ぐらいの量が書かれていたようです。

 何か悪いことをして逃げ回っている二人の男の物語ですが、なぜ逃げ回らなければならないのかは、全体のストーリーを読んでも詳しくは分からないという代物です。

 これは単...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ