江戸とローマ~下水道と肥溜め
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ポンペイの公衆便所を見たらわかる古代ローマの衛生管理
江戸とローマ~下水道と肥溜め(3)公衆便所のシステムと清潔への意識
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
有名な古代ローマの公衆浴場(テルマエ・ロマエ)は当時1000近くあり、かなり混んでいたというが、公衆便所のシステムもかなり行き届いたようだ。その背景としていえるのが整った上下水道システムで、それが庶民生活を支える基盤になったことはいうまでもない。そして、そのことは江戸にも共通していて、突出した整備ぶりは、両者に公衆衛生や清潔の意識をも育んだのだ。(全3話中第3話)
インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分31秒
収録日:2021年9月16日
追加日:2023年9月6日
≪全文≫

●水の豊富なポンペイの排水システム


本村 ポンペイの街に残っている公衆便所のシステムなどを見ると、現代のちょっとした場所の公衆便所のように行き届いたところがあって、便利だっただろうと思います。ああいうものが、ちゃんと完備されているのは、さすがにローマ(です)。

 上水道もそうだし、公衆浴場が非常に普及していて、小さなお風呂まで入れると、ローマの街だけでもおそらく1000近くありました。100万人の都市ですから、1000の公衆浴場があったとしても、その一つを1000人規模で使うわけだから、それなりに混んでいます。

 ポンペイの公衆浴場は、確認されているだけでも五つか六つぐらい。ポンペイは、だいたい1万人ぐらいの都市ですが、それなりの広さがあり、そういうお風呂も使えて、ある程度下水道もできていました。

 分かりやすいのでポンペイの例を続けますが、ポンペイではある程度、道に垂れ流すところもありました。ところが、ポンペイは水が豊富で、30カ所ぐらいの井戸から常に水があふれていました。大きな邸宅では、個人すなわち自宅の中で水を使えるようになっているけれども、庶民はそういうところまで行って、バケツのようなもので汲み、自分の家まで持っていきます。その水が、絶えず下のほうを流れていたわけです。

 ポンペイにはきちんとした舗道が整備されていましたが、向こう側へ渡るための石も置いてあって、下水に触れずに済むような工夫がなされていました。そういう意味では、中世や近代のヨーロッパと比べても、はるかに下水道や汚水の処理について考えられていたわけです。


●暮らしの基盤を支える都市の清潔さ


本村 そういうところが、古代ローマと大江戸日本を比較する(意味でも興味深い点です)。きれいな水を確保したり、お風呂を普及させたりして、清潔さを保つとともに、不潔なものを非常に合理的に処理していく。それらの点で、古代ローマと江戸時代には、非常に共通するものがあったのではないかと思います。

―― 例えば冒頭にヴェルサイユ宮殿のような非常に大きな場所の例が出ました。あるいは貴族階級は香水もたくさん使用していた。そのようなことがあればいいでしょうけれども、(上下水道システムで)一番大きな恩恵を受けるのは庶民階級だったはずです。

 住まいは狭いし、香水を大量に使えるわけでもない。そういう暮らしが、(文学作品な...

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