江戸とローマ~諷刺詩と川柳・狂歌
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
諧謔精神を育んだ江戸とローマ、現代社会とどこが違うのか
江戸とローマ~諷刺詩と川柳・狂歌(4)庶民文化を楽しむ社会の形成
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
川柳と風刺詩を通して庶民文化を楽しんだ「人口100万人都市」江戸とローマ。どちらも当時、大都市でありながらお互いが無関心ではいられない社会を形成していたという。そこには豊かさゆえのゆとりがあったという面もあるが、彼らの諧謔精神は、時代は違ってもコミュニケーションの方法として興味深いものがある。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分33秒
収録日:2021年6月16日
追加日:2022年4月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●庶民文化を楽しむ社会が江戸とローマに出来上がっていた


本村 諷刺詩の場合はローマ史の中での興味深い変化ということなので、ここでは主題にはしませんが落書きにも痛烈な皮肉や面白おかしさがあります。ローマでは、公職選挙のポスターに当たるようなものが、2000点以上にものぼる大量の落書きとして残っています。

 例えば、ワティアという男を治安委員(アエディリス:aedilis)に推薦するものがあります。アエディリスは一般には「造営委員」と訳されますが、要するに警察的な役割をするものです。それが、「こそ泥仲間がワティアをアエディリスに推薦」となっている。あいつが治安委員になれば、俺たちを大目に見てくれるだろうという皮肉が込められているわけです。

 それが、本当にこそ泥仲間による推薦なのか、あるいは反ワティア派が「こそ泥仲間が推薦しているぞ」という形で出したのか。そのあたりは別として、そういう諷刺がローマの落書きの中に出てくるわけです。こういうものが大々的に出てくるところ、江戸における川柳や狂歌の話と非常に通じるものがあるのではないかと思います。

 あえてまとめると、人口100万人の大都市ということがあります。ローマ帝国全体は別として、江戸とローマという範囲で見れば、ちょうど同じぐらいの人口100万の都市ができていました。現代社会ではマンションに住んでいると、隣に誰が住んでいるのかもよく知らないことがあり得ますが、江戸とローマは大都市でありながらお互いが無関心ではいられない社会でした。

 江戸の場合も、尻をつねる女性は見ず知らずではなく、どこかで面識があったりして、お互いに無関心ではいられない。そういう人たちに向けて書いたり、いろいろなやりとりが行われたりしていました。

 そういう社会だから、諧謔の批判精神が非常に円熟し、爛熟していきました。本当に新しい川柳や諷刺詩を生み出し、それをみんなが盛んに楽しむ雰囲気です。詩歌の一つの様式が磨かれ、広く庶民が楽しむような社会が江戸とローマには出来上がっていたのではないかと思います。


●競い合い、楽しみ合う層の底上げ


―― 例えば、政権批判ということで日本でも有名なのが「白河の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こひしき」という狂歌です。これは、田沼意次が賄賂政治で失脚した後、松平定信が権力についたが、あまりにも清すぎて魚が住...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(1)危機の台湾への密航
「国共内戦」危機の台湾…根本博の密航と涙で迎えた中国人将軍
門田隆将
オスマン帝国とは何か~その繁栄と共生の秘密~
オスマン帝国とは何か?その繁栄の理由
山内昌之
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(1)軍人の本義を貫いた根本博中将
ソ連軍から在留日本人4万人を守れ…内蒙古での「戦後」の激闘
門田隆将
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平

人気の講義ランキングTOP10
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
「講義ページ」と「便利機能」の使い方(1)講義ページの便利な使い方
「講義ページ」の便利な使い方…講義テキストの出し方、各話への飛び方、再生速度
テンミニッツ・アカデミー編集部
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(5)「原則なし」の日本
世界は「原則」でできているが、日本は「原則はなし」にする
橋爪大三郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
日本の財政の真実を検証する(3)金利上昇の深刻な影響
金利が上昇した未来を10年スパンで見てみると…何が起きるか?
宮本弘曉
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
織田信長の「天下」とは…最新研究で激変する人物像・時代像
柴裕之
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の資金源…楽市楽座だけではない経済力と軍事力の秘密
小和田哲男