江戸とローマ~諷刺詩と川柳・狂歌
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
冷笑から嘲笑、義憤へ、ローマ諷刺詩人の健全な批判精神
江戸とローマ~諷刺詩と川柳・狂歌(3)川柳・狂歌と諷刺詩の時代
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
日本の川柳や狂歌の源流は、京鴨川の「二条河原の落書」にあるといわれる。悪政に対する批判的風刺の精神が庶民レベルにまで拡大したのが、川柳や狂歌の流行した江戸末期だった。同様のことが、ローマでは風刺詩を通じて紀元前50年頃からの約1世紀に起こる。今回は3人の詩人の作品から、その変遷を見ていく。(全4話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分32秒
収録日:2021年6月16日
追加日:2022年3月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●川柳や狂歌の源流は「二条河原の落書」


本村 前回のシリーズで話しましたが、江戸には非常に立派な水道が引かれていました。その水道の水を井戸にして、ある単位ごとに誰もが井戸を持ち、自分のところまで水を持っていくシステムでした。

 ところが、その水道が必ずしも行き渡らなかったり、何かの都合で廃止になったりすることもあります。玉川上水や神田上水に来ている水を配る段階での話です。そういうわけで井戸が使えなくなったので、しょうがなく自分で井戸を掘ったところがあり、それを皮肉ったものがあります。

「本所深川銭亀の反吐を呑」

 そこら一帯の水道井戸がなくなり、井戸を作ってしまったが、すぐ近くに雪隠(便所)やあくたまり(ゴミ捨て場)があるので、ろくでもない水しか出てこないということを皮肉った句です。

 それから、次はどちらかというと狂歌のようなものかもしれません。

「親の意見となすびの花は千に一つも仇がない」

 これについては、「親の説教と冷や酒はあとで効く」などと今でも言われます。つまり、大人になると分かることが、そのときは分からないでいたというようなことを、そんな句で楽しんだりします。

「雪の朝これが塩なら大儲け」

 というのも、やはりこれを塩として売れば大変な額になるという面白みです。砂糖という説もありますが、砂糖ならもっと高いでしょうね。そういうものもあります。

 もともと京都には、狂歌の元になるようなものとして、二条河原の落書がありました。

「此比(このごろ)都ニハヤル物/夜討(ようち)強盗謀綸旨(にせりんじ)」

 「謀綸旨」は偽の命令書ですが、そういうものが強盗などと同じように出てくるということが、京都ではいかにも古くから言われていた。そういうものが、江戸の中にも自由なかたちかつ庶民レベルで楽しめる余裕が出てきたところが、非常に面白いところではないかと思います。

―― 川柳で非常に有名なのが『誹風柳多留』という句集ですが、あれができてくるのが明和2(1765)年から幕末ギリギリの天保11(1840)年まで。最終的には167編が刊行されたようですが、そこまでずっと営々とつくられ続けたということなので、やはり先生がおっしゃるように江戸の後期のタイミングになりますね。その時代に、庶民もこういうものを大いに楽しんでいく形になるわけですね。

本村 そうです。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
藤田達生
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国大名と民衆の過酷な課題…飢饉の常態化をどう生き延びるか
黒田基樹
ソフトな歴史学のすすめ(1)グローバル・ヒストリーと民俗学
グローバル・ヒストリーの中で日本の歴史を俯瞰する意味
上野誠
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二
信長軍団の戦い方(1)母衣衆と織田信長の残忍性
織田信長を支えた母衣衆に見る戦国のダンディズム
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(12)自転車の青切符と「法と自粛」
【10minで考える】自転車の青切符と「法と自粛」
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(7)ポグロムとホロコースト
歴史の中のユダヤ人大量虐殺…ポグロムとホロコーストの違い
鶴見太郎
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(5)ゴールドや暗号通貨への評価
ゴールドやビットコインへの評価は?…現代社会の写し鏡
養田功一郎
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
『「甘え」の構造』と現代日本(3)人間の自立と『坊っちゃん』のエピソード
『坊っちゃん』の借金問題から考える人間関係の基礎
與那覇潤
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫