「武士の誕生」の真実
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
武士の前身「兵(つわもの)」と「武士」の大きな違いとは
第2話へ進む
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
日本における中世の主役といえば、武士である。鎌倉時代、室町時代、江戸時代は、武士が政権を掌握した、まさに「武士の時代」だった。では武士はいったいどこから誕生したのか。これまでの教科書的理解では、農民の中で力をつけたものが武士になると考えられていた。しかし近年では、その考えは是正されつつある。その背景にあるのは、当時の東アジア情勢とそれに関連する「王朝国家」という考え方である。(全8話中第1話)
時間:12分30秒
収録日:2021年10月22日
追加日:2021年12月15日
≪全文≫

●武士を誕生させた中世は、お手本なき時代だった


 こんにちは。初めまして。日本大学の関幸彦と申します。

 今日は皆さまに、武士の誕生ということで、武士の登場のプロセスをお話ししようと思います。

 武士というと、武的領有者の代名詞として、日本の歴史における中世の主役と考えられています。ただし、中世の時代についてはいろいろと議論があり、近年では院政期である11世紀の末ぐらいから中世の時代へと突入したといわれています。そして、その主役が武士です。そもそも武士は院政期を含めて、その前の時代から日本国の胎内でどのように成立したのかについては非常に大きな議論があります。

 大きな議論を考える上で、大陸情勢、また東アジア情勢という外からの視点と、日本国内部の事情という胎内的な視点の両様を重ね合わせながら議論していくことが最も近道であると思われます。

 ちなみに、武士を育み生み出していった中世の時代は、「お手本がない時代」であると考えられています。

 「お手本がない」とはどういう意味か。7世紀から始まる古代の時代は中国の律令制を1つのお手本にしました。古代の国家は、お手本をしっかりと見つめながら国家デザインやモデルをつくっていったのです。

 日本の歴史を考えたときに、お手本がある時代の一つに先ほど挙げた古代があります。そしてもう一つ、日本が近代へと突入していく幕末から明治維新の時期もまた、欧米というお手本がありました。

 われわれが主題としている武家の時代は、およそ700年の長きにわたって続きます。その700年の長き間に三つの幕府を設定できます。ご承知のように、鎌倉幕府、室町幕府、そして江戸幕府です。

 それぞれの幕府の主役、すなわち武家政権の主役を成したのが、いうまでもなく武士です。武士は700年にわたる大きな時代の主役を成しましたが、そこにはお手本がありません。

 主役となる最初の段階に鎌倉幕府が登場します。この登場の主役を成す武士が、平安時代の400年にわたる時期に、どのような流れの中で育っていったのかについて、いくつかポイントを挙げて議論していきたいと思います。


●「有力農民が武士化した」という理解は是正されつつある


 皆さんたちの多くが中学や高等学校で習った昔の記憶をひも解いていただくと分かるかもしれませんが、「武士は農民のチャンピオンであった。農民が...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
戦国合戦の真実(1)兵の動員はこうして行なわれた
戦国時代の兵の動員とは?…無視できない農民の事情
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏