「武士の誕生」の真実
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律令国家から王朝国家へ、採用された「請負」システムとは
「武士の誕生」の真実(4)2つの軍事的緊張と軍事の請負
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
「兵(つわもの)」の登場を考える際にポイントとなるのが、当時の日本の対外問題である。アジアに位置する日本は、北と南の辺境地域における軍事的課題を抱えていた。そうした対外的な緊張に対応するため、始まったのが軍事の「請負」である。当時の日本の対外関係から、兵が要請されていく背景について考える。(全8話中第4話)
時間:11分10秒
収録日:2021年10月22日
追加日:2022年1月5日
≪全文≫

●北と南の辺境地域における軍事的緊張


 「将門の乱」では、将門は「兵(つわもの)」と呼ばれました。「将門の乱」については、「将門の乱」の道筋を追った『将門記(しょうもんき)』という有名な軍記作品があります。また、院政期に登場した仏教説話集である『今昔物語』でも、「将門の乱」や「純友の乱」について、いろいろと記しています。

 そういう作品の中で、将門のことを「武士」と呼んでいる資料はありません。資料に登場するときには、いずれもみんな「兵」と呼んでいました。最初に少しお話ししたように、兵は「うつわもの」からきています。つまり武器、武具を自由に操り駆使する存在を「兵」と呼ぶとすると、兵はそもそもどういう要請の中で登場したのかという問題に立ち至ります。

 その際に少し考えておかなくてはいけないことがあります。日本は東アジアの一環に位置していることを以前に申し上げましたが、日本には対外的な緊張がいくつかありました。その状況の中で、古代の国家に軍事的に大きな課題としてあったのが、ご承知のように8世紀の段階から9世紀にかけて行われた「蝦夷(えみし)戦争」です。坂上田村麻呂や文室綿麻呂という人たちによって蝦夷の制圧、いわば「征戦」が成されました。

 一方では、日本は東西に、また南北に弓なりの列島なので、その意味では大陸との関係に最も近い九州、北九州、壱岐対馬を含めた地域もまた海防という軍事的な緊張の問題があります。日本を取り巻く北と南の状況として、北は蝦夷との問題、南は新羅(朝鮮)との対抗問題がありました。われわれはどうしてもそのあたりのことを忘れがちですが、そういう軍事的な課題を古代以来ずっと担っていたことをまずは頭の中に入れておく必要があります。それは、兵の登場という問題と対を成す課題でもあったのです。


●2つの軍事的緊張の解消が10世紀の王朝国家の課題


 10世紀の初頭に醍醐天皇という第60代の天皇がいました。醍醐天皇の政治的諮問に応えたのが、ちょうど菅原道真と同じように、学者の家の一族で文人貴族だった三善清行です。この人物が「意見封事十二箇条」という意見書を出します。天皇が、どうすれば日本国の中央政治は良くなるのかと諮問し、その内容に対して提案していきます。

 その提案書の中で10世紀初頭の日本国が抱えている最大の課...

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