「武士の誕生」の真実
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「芋粥」に登場する藤原利仁からわかる地方下向の理由
「武士の誕生」の真実(5)俘囚の役割と武士団のルーツ
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
律令体制の解体に伴い、北と南の軍事課題に直面していた当時の政権は、その鎮圧をどうするかに苦心していた。そこで考え出された方策が「夷を以て夷を制す」。つまり、北で反乱を起こす蝦夷勢力を、南で問題となっていた新羅海賊への軍事に転用させることである。彼らは「俘囚」と呼ばれ、優れた武力を持っていた。そこで重要になるのが彼らを束ねる軍事指揮官。そこが武士団のルーツへとつながっていく。(全8話中第5話)
時間:14分26秒
収録日:2021年10月22日
追加日:2022年1月12日
≪全文≫

●北と南で起こっている軍事問題にどう対応するか


 いわばその辺境地域であるかつての東北方面と九州方面に軍事課題がとても山積していました。

 大前提として、律令体制の場合の軍事力は、農民たちが兵士になっていきます。「正丁」と呼ばれる成人の農民たちが、3人に1人の割合で軍団に配置されて、兵士の訓練を受けていきます。そのため、徴兵と同じで、一種の税の対象になっていきます。しかし、この軍団制が律令体制の解体に伴って機能しなくなってきます。そうすると、地方の騒擾や騒乱を一体誰がどういう形で鎮圧していくかが課題になっていきます。

 かつて律令時代はそうした軍団が鎮圧に勤しみましたが、それができなくなった段階で、同時多発的に辺境における軍事課題として起こったのが、北の方面では蝦夷の問題、南の方面では新羅海賊の問題です。

 つまり、非常に緊急的な課題が辺境の中では山積していました。この山積している部分に対応しようとしても、軍団が解体してしまった状況の中では上手く機能し得ません。これをなんとか打破するための方策が、いわば「夷を以て夷を制す」です。つまり敵を以て敵を制するという方策、戦略が取られていきます。

 具体的にいうと、日本国が北と南にこの2つの軍事課題抱えていたときに、北の「俘囚(ふしゅう)」の勢力、あるいは蝦夷たちの勢力は大変戦いに優れていました。ある資料によると、蝦夷たちの武勇は、班田農民の10人分にも相当するぐらいに優れた武力を有していたといいます。そのため、この優れた武力をうまく転用することが課題になります。


●俘囚を転用することで「夷を以て夷を制す」


 「俘囚」は、中央政府に帰順、帰属した蝦夷たちのことを言います。武力その他、諸々の政策によって、昔抵抗した「えみし」「えぞ」と呼ばれる、辺境の民である蝦夷たちの帰順が成されました。ですから、俘囚という言葉の中には、天皇の王化(おうか)に帰するという意味があります。

 農民たちで軍団戦がうまくいかなくなり、自分たちの徴兵制が立ち至らなくなった段階で、俘囚の連中に彼らを養うだけの「俘囚稲」という稲の税を支払うようになります。農民はそれを支払うことで徴兵的な税を免れる代わりに、俘囚稲という形の租税を国家に出すのです。そして、国家はその税を俘囚たちの給与に充てます。簡単にいえば、給料に充てることによって俘囚...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋 (1)日本橋に見る徳川家康の手腕
徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは
堀口茉純
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
織田信長の「天下」とは…最新研究で激変する人物像・時代像
柴裕之
オスマン帝国とは何か~その繁栄と共生の秘密~
オスマン帝国とは何か?その繁栄の理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
編集部ラジオ2026(30)AI時代の企業と道徳
【10minで考える】CPO(最高哲学責任者)…AI時代に必須の哲学とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(6)リベラルアーツの本質
自分にしかできない自分の世界を味わうために、他の人とつながる
橋爪大三郎
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
不便益システムデザインの魅力と可能性(2)不便がもたらす4つの益
写ルンです、おやつ300円まで…不便がもたらす益の数々
川上浩司