山上憶良「沈痾自哀文」と東洋的死生観
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
生涯学習のすすめ――常に人は考えながら生きていく動物
山上憶良「沈痾自哀文」と東洋的死生観(4)生涯学習として思索
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は涙なしに観られない映画となったという上野氏。「幸せとは何か」を考えるものとして捉えると、ドイツ哲学の「生の哲学」や実存主義と共通する主題をはらんでいるという。そして、そのための思索として生涯学習の重要性を説く。(全4話中第4話)
時間:7分42秒
収録日:2024年4月2日
追加日:2024年8月2日
≪全文≫

●幸せとは何か――「生の哲学」、実存主義とも通じる山上憶良の思想


 さらにもう一つ、学生と一緒に映画を観に行きました。私も歳を重ねて涙もろくなったもので、実をいうとあらかじめ映画の内容を聞いてハンカチでは間に合わないだろうとタオルを持っていたために、泣いてもなんとか涙をぬぐうことができました。

 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』という映画を観たのです。私から見ると、お花畑だらけのようなきれいな映像で、実際にはそんなことはないだろうとも感じています。これはどういう映画かというと、特攻隊の生き様を見た(女子)学生が、生き方を変えるという映画です。

 考えてみると、これも一つの「幸せとは何か」ということを考える映画です。私も泣きましたが、私が行ったときの観客は半分が高校生で、6:4の割合で女の子でしたね。今の若い人たちですから、終わった途端にあちこちから声が聞こえてきました。「やべぇ」という声でしたが、若い人の言葉で「心に響いた。自分の心が揺れ動いてしまって大変なことになっている」という状態を「やべぇ」というわけです。

 それは何を(指しているか)というと、今の現実社会、高校生たちを取り巻く今の社会です。しかも、決して全員が豊かで幸せというわけではありません。そういった中、自分の置かれた環境の中で、「自分たちは何をもって幸せとするのか」という哲学がそこにあると見なければいけないと思うわけです。

 そこで考えてくると、山上憶良の思想というものを大きく見渡したときには、「生きていることに最も大きな重点というものがある。それが最も尊重されるべきことである」ということになります。

 これは、ドイツの哲学でいうとハイデッガーなどの「生の哲学」ということになるでしょう。また、時代が1950~1960年代ということになると、フランスのジャン=ポール・サルトルやボーヴォワールなどのような実存主義哲学ということになると思います。これは、そういうものとそれほど変わらないわけです。

 また、不思議なことに、人文科学というものには、実をいうと古い・新しいということはないのです。ソクラテスの問いが古いとか、山上憶良の問いが古いとか、そういうことはないわけです。こう考えると、今の15~16歳から18歳ぐらいの人たちも、そういうふうに模索していっているわけです、「何が幸せか」を。また、8...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
樋口隆一
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫

人気の講義ランキングTOP10
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(7)ベイトソンの学習理論とコンテクスト
ダブルバインドとは?ベイトソンの学習理論から解き明かす
斎藤環
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
ポスト国連と憲法9条・安保(4)自衛隊と憲法改正の問題
「憲法9条に自衛隊を書き込む」という改憲案は「姑息」
橋爪大三郎
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
老子の神髄(2)達人の境地と「無為」
無為とは「絶対なる喜びを得る」こと…その境地こそ長寿への秘訣
田口佳史
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎