●ピアノの歴史は江戸時代に始まった
<ピアノ演奏>
――ありがとうございます。
野本 皆さん、こんにちは。
――こんにちは。本日は、玉川大学芸術学部の野本由起夫先生にピアノで実際に演奏していただきながら、音楽史についてたどる講義をお願いしたいと思っています。先生、どうぞよろしくお願いいたします。
野本 はい、よろしくお願いします。早速ですけれども、皆さん、ピアノという楽器はもちろん小さいころからおなじみだと思います。実はこの楽器、非常に新しく生まれた楽器なんですね。18世紀の後半になってようやく実用的な楽器になってきた。つまり、皆さんが知っている作曲家でいうと、モーツァルトあたりです。でも、モーツァルトのときもまだ、こんな立派な楽器ではなく、その後のベートーヴェンぐらいでようやく楽器として使える性能になってきたんです。
――日本でいうと、江戸時代?
野本 江戸時代なんですね。2020年がベートーヴェン生誕250年ですから、まだそのぐらいの楽器なんですね。
――普通、日本人は、もうちょっと古いかと思っていますね。
野本 そうなんです。今日は「ピアノでたどる西洋音楽史」ですが、実際にピアノ演奏されたものだと200年ぐらいしか歴史をたどれません。そこで便宜上、ピアノがなかったころのものもピアノを使って弾いていくことをご了承いただきたいと思います。
●音楽史上の大発明ヴァイオリンも江戸時代に登場
野本 ピアノと同じぐらい、皆さんになじみ深いクラシックの楽器というと、たとえばヴァイオリンを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。実はヴァイオリンも、それほど古くない楽器です。ヴァイオリンが実用的な楽器になったのは、音楽史ではバロック時代と呼ばれるころ、17世紀の終わりから18世紀の半ば近くまでぐらいの時代です。これまた、江戸時代に完全に入っていて、江戸幕府が開かれてから100年ぐらい経つころにようやくヴァイオリンという楽器が発明されます。
――ヴァイオリンというと、皆さん「ストラディバリウス」という名器をすぐ連想されると思います。
野本 そうですね。一番高いのは12億以上だったと言われています。そのストラディバリウスが製作されるちょっと前に、ヴァイオリンは発明されたんです。アマティという方がつくったんですけど、そのアマティの弟子がストラディバリウスをつくったストラディ...