ピアノでたどる西洋音楽史
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パクリ上等で、ベートーヴェンの絶対音楽の継承者に
ピアノでたどる西洋音楽史(8)絶対音楽とブラームス
野本由紀夫(音楽学者/元玉川大学教授)
音楽に一大革命を起こしたベートーヴェンの後、ロマン派の作曲家たちは、どのように作曲と向き合っていったのだろうか。今回は、「ドイツ三大B」とも呼ばれ、ベートーヴェンの「絶対音楽」を忠実に継承しようとしたブラームスの場合を取り上げる。(全11話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:8分35秒
収録日:2019年9月4日
追加日:2019年12月13日
≪全文≫

●「ドイツ三大B」はブラームスの売り込み文句?


――前回までベートーヴェンのお話を聞いてまいりまして、音楽にまさに革命が起こりました。ここからは、ベートーヴェンの後に音楽がどうなっていくかというお話をお聞きできればと思います。前回、「ジャジャジャジャーン」の第5番と、「田園」の第6番が双子だということで。

野本 これですね。

<ピアノ演奏>

 第5番。そして第6番。

<ピアノ演奏>

 ベートーヴェン本人が「田園交響曲」とタイトルをつけ、第1楽章には「田舎に着いたときの陽気な感情の芽生え」と、どういう感情を表現してるのかを明示しました。しかも、第5番と第6番はほぼ同時期に作曲していたのに、まるっきり性格の違う曲です。

 ベートーヴェン以後の作曲家の人たちを「ロマン派」と呼びますが、その流れはほぼ19世紀いっぱい続いていきます。実は19世紀のロマン派の人たちは、ベートーヴェンの第5番を最高のモデルにするか、第6番をモデルにするかで、大激論を交わしていったんです。

 第5番の交響曲のように、「ジャジャジャジャーン」というリズム1個だけで大交響曲を書いてしまうぐらい、モチーフにこだわって書こうよという人々。言ってみれば、非常に抽象的で、やや理屈っぽく、構築性の高い音楽をつくっていくべきだといった人たちのことを「絶対音楽派」と呼びます。その代表だった人が、ブラームスなんです。

 かつてはよく「ドイツ三大B」と言われたものです。ドイツ生まれのドイツ人でありながら、みんな苗字にBが付く。バッハ、ベートーヴェン、そしてブラームス。これ、実は当時のキャッチコピーだったんですね。

――当時と言うと。

野本 ブラームスの当時のキャッチコピー、つまりブラームスを売り込むためのキャッチコピーとしてつくられたのが「三大B」なんです。

 今日のキャッチコピーと同じで、「えっ、バッハ? ドイツ民族の英雄じゃないの。ベートーヴェン? 音楽の神様じゃないの。ブラームスもBが付く、すごい!」というふうに、ちょっと、だまされるような感じで、キャッチコピーとしてつくられたんです。どっちにしても、そういうキャッチコピーができるのは、ブラームスがベートーヴェンの音楽の歴史を継いでいこうという人だったからこそなんですね。


●ベートーヴェンを意識しすぎたブラームス


――ブラームスが第1番交響曲を書くのに...

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