●日本文化の原点となった『古今和歌集』仮名序
皆さん、こんにちは。渡部泰明です。これから『古今和歌集』の仮名序についてお話しさせていただきます。
『古今和歌集』はご存じの通り、日本最初の勅撰和歌集です。歌集としては『万葉集』がさらに古くありますけれども、天皇が命じて選ばせた、すなわち「勅撰」和歌集としては1番目に当たります。
その『古今和歌集』には、「真名」すなわち漢文の序(真名序)と、「仮名」の序(仮名序)があります。そのうち仮名序は紀貫之が執筆しました。(彼は)『古今和歌集』の撰者の1人です。
この真名序と仮名序については、真名序が先にできて、(その後に)仮名序ができたという説が一応有力になっています。これについては大変に論争があります。真名序(漢文の序)ということは、当然中国の文学、中国の影響を非常に強く受けている。それを踏まえて仮名序が成立したと、大まかに考えておきたいと思います。
しかし、仮名序は日本の芸術論の原点となった。もっと大きくいえば、日本文化の原点となったといっていいかと思います。
この仮名序を踏まえてたくさんの和歌の論(歌論)が生まれ、その歌論を軸にして能楽論や連歌論、俳諧の論のような、さまざまな芸術論が生まれたといっても過言ではありません。すなわち日本初の芸術論、日本文化の本当に最初の精華といっていいと思うのです。
●「和歌とは何か」を歴史と技法で伝えた貴重な短文
その仮名序の内容の概略を、資料に示しておきました。大きく7つに分けて考えたいと思います。
その1番目は、「和歌とは何か」。和歌とはどういうものなのか、どういう働きをするのかということを真正面から捉え、それを高らかに宣言した、非常に特色ある始まり方となっています。
続いて「和歌の始まり」。和歌の起源といえばいいでしょうか。どのように和歌が始まってきたのかということを説明していきます。
古代、神話的な時代から人の世となってからのお話が、まずあります。下照姫、素戔嗚尊(すさのをのみこと)、難波津の歌・安積(あさか)山の言葉などという語句が出てまいります。本当に神話的な時代を含んで、和歌の起源が語られているわけです。
それから3番目として、「和歌...