『古今和歌集』仮名序を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
なぜ仮名序で六歌仙を批評?ポイントは「さま」と社会性
『古今和歌集』仮名序を読む(6)六歌仙の先輩たち
渡部泰明(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)
古来、謎とされてきたのが「仮名序」で登場する六歌仙への批判めいた言葉である。六歌仙とは、『古今和歌集』の撰者から数えて50~80年ほど先輩にあたる、僧正遍昭、在原業平、文屋康秀、喜撰法師、小野小町、大伴黒主の6人である。だが、撰者たちは自分たちの正統性と革新性を主張するため、直接の先輩たちを乗り越えるという文脈で、あえて否定的に語ったのではないか。そう考えると、筋が通る。では、それぞれを、どのように評したのか。具体的に解説しながら本シリーズ講義を締めくくる。(全6話中第6話)
時間:13分42秒
収録日:2023年7月5日
追加日:2023年12月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●なぜ「仮名序」に「六歌仙」への批判めいた言葉が?


 「六歌仙の先輩たち

 そのほかにちかき世にその名聞こえたる人は、すなはち僧正遍昭は、歌のさまは得たれどもまことすくなし。たとへば絵にかける女(をうな)を見ていたづらに心をうごかすがごとし。

 在原業平は、その心あまりて言葉足らず。しぼめる花の色なくて、匂ひ残れるがごとし。

 文屋康秀は、言葉はたくみにてそのさま身に負はず。いはばあき人のよき衣(きぬ)着たらむがごとし。

 宇治山の僧喜撰は、言葉かすかにしてはじめをはりたしかならず。いはば秋の月を見るに、暁の雲にあへるがごとし。よめる歌多く聞こえねば、かれこれを通はしてよく知らず。

 小野小町は、いにしへの衣通姫(そとほりひめ)の流なり。あはれなるやうにて強からず。いはばよき女のなやめる所あるに似たり。強からぬは女の歌なればなるべし。

 大伴黒主はそのさまいやし。いはば薪負へる山びとの、花の陰にやすめるがごとし。

 このほかの人々その名きこゆる、野辺におふるかづらの這ひひろごり、林にしげき木の葉のごとくに多かれど、歌とのみ思ひてそのさましらぬなるべし」

 ここで6人の先輩たち、『古今和歌集』の撰者からすれば数十年、ちょうど50~80年ぐらい先輩に当たる人たちを紹介しています。後に「六歌仙」と呼ばれるようになりますが、「歌仙」というのは当然優れた歌人という意味ですから、これも褒め言葉のはずなのですが、意外にけなしています。

 ここが昔から謎で、なぜこんなにけなしているのだろうといわれることが多いのです。これは、やはり自分たちのやろうとしていることが何か革新的なものなのだ、イノベーションを起こすものだといいたいときにしばしばある言い方です。直接の先輩たちを乗り越えるという文脈で語る、つまり否定的に語るということです。

 けれどもそれは、おおもとの始めた人たち、始原つまり創設者(会社でいえば創設者に当たる人たち)のやり方を正しく継承していると(主張)するためです。つまり、先輩たちはそういうものを継承していなかった。自分たちこそ継承するものだ。そのように論理立てることによって、自分たちの正当性と新しさを両方成立させようとしている。このような論法は(今も)しばしば用いられますが、そうした論法のいわば先駆けです。

 ですから、どうしても悪口めいた言...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(12)自転車の青切符と「法と自粛」
【10minで考える】自転車の青切符と「法と自粛」
テンミニッツ・アカデミー編集部
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(5)ゴールドや暗号通貨への評価
ゴールドやビットコインへの評価は?…現代社会の写し鏡
養田功一郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄