『古今和歌集』仮名序を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
和歌には社会的な意義もあった…『古今和歌集』の思想とは
『古今和歌集』仮名序を読む(5)いにしへの歌
渡部泰明(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)
「仮名序」では「いにしへの歌」を通して歌の社会的意義が述べられる。『古今和歌集』が編纂された頃(900年頃)について、「仮名序」は「今の世の中は派手さを求め、人の心も移ろいやすくなってしまったがために、不実な歌、いい加減な歌ばかりが詠まれるようになった」と語る。しかし、古代の歌はそうではなかった。古代の歌は天皇が「臣下の賢愚を判断する」という社会的意義も持っていたと強調するのである。実は、ここに『古今和歌集』の思想がある。そして、私的な思いと社会的意義を両立するために、「レトリック」が有効な技法となるのである。(全6話中第5話)
時間:8分13秒
収録日:2023年7月5日
追加日:2023年12月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●和歌は本来は「公的な意味」を保ち、「社会的な意義」を持つもの


 「いにしへの歌

 今の世の中、色につき人の心花になりにけるより、あだなる歌、はかなきことのみいでくれば、色好みの家に埋もれ木の人しれぬこととなりて、まめなるところには花すすきほに出だすべきことにもあらずなりにたり。

 その始めを思へばかかるべくなむあらぬ。いにしへの世々の帝、春の花のあした秋の月の夜ごとにさぶらふ人々を召して、ことにつけつつ歌をたてまつらしめたまふ。あるは花をそふとてたよりなき所にまどひ、あるは月を思ふとて、しるべなき闇にたどれる心々を見給ひて、賢し、愚かなりと知ろしめしけむ。しかあるのみにあらず、さざれ石にたとへ、筑波山にかけて君をねがひ、よろこび身にすぎたのしび心にあまり、富士の煙によそへて人を恋ひ、松虫の音に友をしのび、高砂・住の江の松も相生(あひおい)のやうにおぼえ、男山の昔を思ひいでて、女郎花のひとときをくねるにも、歌をいひてぞなぐさめける」

 はい。(今回は)この部分について(順に)考えてまいりましょう。

 「今の世の中は派手さを求め、人の心も移ろいやすくなってしまったがために、不実な歌、いい加減な歌ばかりが詠まれるようになって、好き者の家の中に埋もれ切ってしまい、それらの歌を誰も知らなくなってしまった。改まった公的なところにしっかりと提出することもなくなってしまった。

 しかし、その初めを思うと、こんなはずではなかった。いにしえであれば、その古代の代々の天皇は春の花の朝、あるいは秋の月の夜、仕えている人々を召して、折々につけて歌を献上させなさった。あるときは花をたとえると言って、頼りないところに迷い込んでしまい、あるときは月を思う心を表現しようとして、道案内もない闇に迷子になってしまう。そんな心々、詠んだ人の心々をご覧になって、ああ、こいつは賢い。いや、こいつは愚かだ、とご判断なさったのだろう。」

 まずちょっとここまでの部分で考えてみたいと思います。

 先ほど(まで)述べたように、古代の歌は歌の父母から始まり、そして6種類に分かれて、歌が広まっていった。その後はどうなっただろう。いや、今現在はどうも不誠実な、中身のない歌ばかりである。特に恋の歌が詠まれることが多くなり、もうまったく私的に歌を詠むようになってしまって、公的な歌、社会的に意義のある...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
日本画を知る~その技法と見方(1)写実・写意・写生
日本画で大切な「写意」「写生」の深い意味とは?
川嶋渉
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
AI時代と人間の再定義(7)AIと倫理の問題と法整備の可能性
AIに正しい倫理を学ばせるには?徳倫理学のススメ
中島隆博
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
編集部ラジオ2026(2)「時代の大転換期の選挙」特集を解説!
「大転換期の選挙」の前に見ておきたい名講義を一挙紹介
テンミニッツ・アカデミー編集部
おもしろき『法華経』の世界(10)未来への智慧と希望
「未来応化=どんな未来も大丈夫」…ブレない臨機応変の力
鎌田東二
逆境に対峙する哲学(8)白隠の覚悟
宮本武蔵「型を捨てろ」と「守破離」が教えてくれること
津崎良典
これからの社会・経済の構造変化(4)日本企業の課題と組織改革の壁
日本の場合、トップダウンよりボトムアップで変えるべき?
柳川範之
こどもと学ぶ戦争と平和(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
戦争は絶対してはいけない…外交官の母が説いた平和の尊さ
小原雅博
徳と仏教の人生論(6)物事の本質を見極めるために
「境地は裏切らない」とは?禅の体験から見えてきたもの
田口佳史
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二