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「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

釘貫亨
名古屋大学名誉教授
概要・テキスト
『日本語の発音はどう変わってきたか 「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅』(釘貫亨著、中公新書)
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日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本語を研究し、復元する資料として有用な万葉仮名の誕生と変遷を追っていく(全6話中第1話)。
時間:12:44
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
≪全文≫

●日本語は世界第一級の文明言語である


 はじめまして。私は釘貫亨と申します。日本語学、日本語史を専門領域として、これまでずっと研究してまいりました。

 今回のお話に一番近いものとしては、最近中公新書から『日本語の発音はどう変わってきたか 「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅』(2023年刊)を出して、比較的好評をいただいています。もう少し堅いほうの、やや専門的な領域に当たる本としては、ずいぶん前になりますが、『近世仮名遣い論の研究』(2009年刊)を名古屋大学出版会から出しました。これはかなり専門領域ですが、(今回)お話しすることと関係はあるかもしれませんので、この2冊ぐらいをご紹介しておきます。

 今回、テンミニッツTVより日本語の音声の歴史に関して話をしてもらいたいという依頼を受けましたので、それを中心にお話をします。ですが、私なりのメインテーマとして考えようとしているのは、日本語というものを世界のなかに位置づけると、どんな言葉なのかということです。

 日本語というのは、世界的な観点から眺めるとどんな評価がなされるか。そこに関心を置いてお話しさせていただくとすると、現代日本語に立ち入ります。現代日本語を勉強すると、文学をはじめ、歴史、思想、文化、ビジネスも含めて非常に多様な領域に入り込み、大変豊かな情報を得ることができます。この非常に多岐にわたる情報は、日本語の歴史も含めて、それぞれ世界的な意味を持っていると考えます。

 それは決して身内びいきというような意味ではなくて、客観的に外国の方々が盛んに勉強し、研究されているという事実からはっきり言えるのではないでしょうか。その意味でいえば、日本語というのは第一級の文明言語であるというふうに言っていいのではないか。

 外国人にとっては日本語を勉強すること、日本人にとっては改めて母語の日本語を反省し、勉強し直すことにはそれなりの値打ちがあるということを、歴史を通じてお話ししたいと考えています。


●古代日本語と万葉仮名


 私がとくに専門にしてきたのは古代日本語です。古代というのは、つまり奈良時代ということです。奈良時代の日本語というのは、日本語の音声のみならず文法、それ...
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