文明語としての日本語の登場
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
万葉仮名から平仮名へ…「いろは歌」が示す日本語の変化
文明語としての日本語の登場(4)平安時代語と文芸の登場
釘貫亨(名古屋大学名誉教授)
平安時代に入ると、日本語の母音は八つから五つに減り、各種の音便ができる。単語は長く、発音はルーズになっていくのだ。文字の歴史は万葉仮名から平仮名と片仮名が生まれる画期的な時期を迎え、「いろは歌」が成立して手習い歌として親しまれる。こうした変化がやがて王朝文芸を支えていくのである(全6話中第4話)。
時間:11分05秒
収録日:2023年12月1日
追加日:2024年3月29日
≪全文≫

●「音便」が伝える単語の多音節化


 奈良時代語については以上のことが分かったわけですが、次に平安時代になるとどうなるか。

 発音の歴史からいうと、新しい事実が奈良時代から平安時代にかけて出ます。その一つは、前回お話しした8母音から5母音へ減ったことです。

 それからもう一つは、「音便」ができたこと。音便というのは、たとえばイ音便「書いて」、ウ音便「悲しうす」、撥音便「飛んで」、促音便「切って」など。習われた方も多いと思いますが、とくに平安時代語では、文法的な機能が非常に活発化して、音便が増えます。「て」という助詞がくっついたときには、文法的な単位が大きくなる。つまり、それが一つの単語になります。

 今までであれば、たとえば「と・り・て」というかたちでクッと隣接しただけでした。その「とりて」が「とって」になることは、「とって」で1単語であるということです。音便はいわばその標識(マーク)であるといえます。

 これは私事ですが、先日テレビに出ました(笑)。「『ん』という平仮名は音便を表す。だから、これは接着剤だ」というようなことを話したのをご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。接着剤というのは、単語と単語をくっつける働きがあり、単に並ぶのではない。音の変化によってグニャッとくっつけるかたちの音便ができたのは、平安時代語の大きな特徴です。

 その背景には多音節化する、つまり日本語の単語が長くなるという趨勢がありました。「掛く」が「掛かる」、「ひ」が「ひかり」になって多音節化するという趨勢のなかで、発音が非常にルーズになっても許容される。そのために、このような音便ができあがってきたのだと推測されます。


●平仮名と片仮名の成立と用途


 発音の変化とともに、奈良時代から平安時代にかけては文字が変わりました。つまり、奈良時代には仮名といっても万葉仮名しかなかった。だから、すべて漢字で書かなければならず、書くのにやたら時間がかかる。

 ところで『源氏物語』は54帖あります。これは散文文学で、『伊勢物語』も『枕草子』も同様です。散文を万葉仮名でいちいち書いていたら大変です。だから、私たちが研究する奈良時代の発音を復元する資料としては万葉仮名が大変ありがたいですが、使う側にとってはなかなか難しいものです。

 です...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(1)読み続けられる18世紀の小説
なぜ『ロビンソン・クルーソー』は“最初の近代小説”なのか
武田将明
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
深掘りシェイクスピア~謎の生涯と名作秘話(1)シェイクスピアの謎
シェイクスピアの謎…なぜ田舎者の青年が世界的劇作家に?
河合祥一郎
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄

人気の講義ランキングTOP10
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(3)戦争終結シナリオと大統領選挙の行方
MAGA連合に亀裂!?イラン戦争が及ぼす大統領選への影響
東秀敏
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄
ユダヤ神話の基本を知る
ユダヤ教の神話…天地創造、モーセの十戒、死後の世界
鎌田東二
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【10minで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(1)米を食べる日本人と『分裂病と人類』
日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
神話の「世界観」~日本と世界(2)北欧神話との共通性
北欧神話に登場する三神と日本の神々には共通性がある
鎌田東二
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治