●天皇を保持する国のシステムと武士の存在
皆さん、こんにちは。私は関幸彦と申します。よろしくお願いいたします。
今回のテーマは平安時代ということで、その平安時代の大きな流れをお話ししながら、一方では、平安の時代が持った今日的意味を考えながら、同時に、歴史というのは過去を単純に掘り下げるだけではなく、その過去から今日的なテーマをどう汲み上げていくかという、そういうところのポイントを、これから何回かにわたってお話ししようと思います。
以前、この講座をお取りになっている方に、私は武士の問題を扱った経緯があります。武士とか武家とか、あるいは幕府というものの成り立ち、成立過程ということを前にお話ししました。
そこでの結論は、直接その部分には論及できませんでしたが、今回は、貴族なり、あるいはそれと関連して武士なりという話をする際に、参考までに言わせていただくと、この『武家か天皇か』という、朝日新聞出版から昨今出た私の本があり、その中にも今日のテーマと、前回の武士のテーマとの連動が書かれておりますので、ぜひ参考にしてください。
そこでの結論ですが、結局、日本の歴史は、天皇という存在、つまり国のシステムとしての天皇という存在を、ずっと歴史の中に保持し続けていきました。そして、一方ではそれに対峙するかたちで、武士なり武家なりという存在があったということです。
その武士なり武家なりというものを誕生させたのは、中世という時代です。中世という時代は、いわば突然到来するわけではなく、それ以前の段階を経ながら徐々に到来していくということです。前回は、その武士の成立のプロセスについて考えながら、日本の歴史を俯瞰してきたということになると思います。
●日本史上最長の平安時代が持つ意味
今回のメインテーマはその武士、武家というものが登場する以前、別の言い方をすれば、歴史のバトンというものが、貴族の時代から武士の時代に受け継がれていくという、そのバトンゾーンの時代です。このバトンゾーンの時代を、一般的に広く「平安時代」と呼んでいます。
平安時代と一口にいっても、400年という非常に長期に及ぶ時代で、過去の日本の歴史を見ても400年にもわたる長い時代というのはありません。皆さんご承知のように、江戸時代でさえ250年ないし260年ほどです。それをはるかにしのぐ期間が、平安...