平安時代の歴史~「貴族道」と現代
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『古事談』『古今著聞集』にみる平安朝の結果オーライ主義
平安時代の歴史~「貴族道」と現代(7)律令国家と王朝国家の違い
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
摂関政治から院政へと移行していく中で、王朝国家はその特徴をさらに強めていった。公家、武家、寺社家の3つの権門は、それぞれの分野で権力を発揮して律令国家と異なる請負体制を確立させた。当時の様子をうかがい知ることのできる『古事談』『古今著聞集』という鎌倉時代の説話集がある。その中の逸話を読むと、平安後期の王朝国家が律令国家の理想主義とは異なり、柔軟性のある、いわば結果オーライ的な現実主義の姿勢を取っていたかがよく分かる。(全9話中第7話)
時間:11分41秒
収録日:2023年10月20日
追加日:2024年2月16日
≪全文≫

●3つの権門がバランスよく職能を分担した


 併せて、われわれが考えておかなければいけないのは、その摂関政治の段階で政をする人に主脈を置かれたとき、前に言いましたが、王朝の時代というのは請負ということを原理としたということです。

 つまり、天皇・朝廷が一元的に権力を握っていますので、この権力を握っている部分を、それぞれ適材適所に合わせて各家柄が相応に請け負うシステムというのが生まれるわけです。

 その請け負うシステムの中で、摂関家という家柄もあるだろうし、それから前に言ったような大臣家という家柄もあるだろうし、様々な家柄がそれぞれのレベルに応じて、何々家、何々家というのが登場してくるのです。

 しかし、大きな括りで言えば、貴族、公家というものの中の家柄、それから武家という中での戦う人たちの家柄、それから宗教権門の寺社家という部分での家柄と、大きくいえば家々の家柄の権門というのはだいたい3つに分かれます。公家、それから武家、寺社家で、その大きな括りの中でさらに分派的な枝葉でいろいろな家々が分立・分流していきます。

 平安時代というのはその意味では、かつての律令の時代と異なり、いわばそれぞれの権門がそれぞれの専門分野に応じて、それぞれの職能を分担して請け負っていくという、こういうシステムなのです。


●鎌倉時代の説話集『古事談』から読み解く律令国家と王朝国家の違い


 ちょっと抽象的な話が続きましたが、有名な説話集に『古事談』という鎌倉時代の説話集があります。古いという字に、事件の事に、それから談話の談という字を書きます。その『古事談』の中に参考になる逸話があります。要するに、律令国家と王朝国家を比較する上での逸話です。律令国家は、例えば「理想主義」とかさまざまな建前主義といわれるように、その『古事談』の中には次のような話があります。

 大江匡房(まさふさ)という貴族がおります。その大江匡房は太宰府の役人をしていました。そのとき、官物、つまり税金を太宰府から都に送るときに瀬戸内海を通るわけですが、これを規定通り、律令通りの規定通りの形で集めた官物を満載した船を、「道理の船」と言いました。

 それから一方では、いちいち律令のシステムに則ってやっていられないと、もう苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)で受領が好き放題に、結果だけがよければいい、帳尻さえ合えば...

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