平安時代の歴史~「貴族道」と現代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『古事談』『古今著聞集』にみる平安朝の結果オーライ主義
平安時代の歴史~「貴族道」と現代(7)律令国家と王朝国家の違い
歴史と社会
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
摂関政治から院政へと移行していく中で、王朝国家はその特徴をさらに強めていった。公家、武家、寺社家の3つの権門は、それぞれの分野で権力を発揮して律令国家と異なる請負体制を確立させた。当時の様子をうかがい知ることのできる『古事談』『古今著聞集』という鎌倉時代の説話集がある。その中の逸話を読むと、平安後期の王朝国家が律令国家の理想主義とは異なり、柔軟性のある、いわば結果オーライ的な現実主義の姿勢を取っていたかがよく分かる。(全9話中第7話)
時間:11分41秒
収録日:2023年10月20日
追加日:2024年2月16日
≪全文≫

●3つの権門がバランスよく職能を分担した


 併せて、われわれが考えておかなければいけないのは、その摂関政治の段階で政をする人に主脈を置かれたとき、前に言いましたが、王朝の時代というのは請負ということを原理としたということです。

 つまり、天皇・朝廷が一元的に権力を握っていますので、この権力を握っている部分を、それぞれ適材適所に合わせて各家柄が相応に請け負うシステムというのが生まれるわけです。

 その請け負うシステムの中で、摂関家という家柄もあるだろうし、それから前に言ったような大臣家という家柄もあるだろうし、様々な家柄がそれぞれのレベルに応じて、何々家、何々家というのが登場してくるのです。

 しかし、大きな括りで言えば、貴族、公家というものの中の家柄、それから武家という中での戦う人たちの家柄、それから宗教権門の寺社家という部分での家柄と、大きくいえば家々の家柄の権門というのはだいたい3つに分かれます。公家、それから武家、寺社家で、その大きな括りの中でさらに分派的な枝葉でいろいろな家々が分立・分流していきます。

 平安時代というのはその意味では、かつての律令の時代と異なり、いわばそれぞれの権門がそれぞれの専門分野に応じて、それぞれの職能を分担して請け負っていくという、こういうシステムなのです。


●鎌倉時代の説話集『古事談』から読み解く律令国家と王朝国家の違い


 ちょっと抽象的な話が続きましたが、有名な説話集に『古事談』という鎌倉時代の説話集があります。古いという字に、事件の事に、それから談話の談という字を書きます。その『古事談』の中に参考になる逸話があります。要するに、律令国家と王朝国家を比較する上での逸話です。律令国家は、例えば「理想主義」とかさまざまな建前主義といわれるように、その『古事談』の中には次のような話があります。

 大江匡房(まさふさ)という貴族がおります。その大江匡房は太宰府の役人をしていました。そのとき、官物、つまり税金を太宰府から都に送るときに瀬戸内海を通るわけですが、これを規定通り、律令通りの規定通りの形で集めた官物を満載した船を、「道理の船」と言いました。

 それから一方では、いちいち律令のシステムに則ってやっていられないと、もう苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)で受領が好き放題に、結果だけがよければいい、帳尻さえ合えば...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩

人気の講義ランキングTOP10
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
日本の定年制はおかしい…ガラパゴス的で不幸を招く制度
出口治明
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉