平安時代の歴史~「貴族道」と現代
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「貴族道」とは何か――武士の対極にある貴族の価値理念
平安時代の歴史~「貴族道」と現代(8)平安王朝における「貴族道」
歴史と社会
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
平安時代の貴族は位階三位以上を指していたが、彼らが国政の中枢を担当する一方で、位階四位以下の人々は地方政治を担った。そしてこの時代、貴族たちは独自の価値観として、「武士道」に対をなす「貴族道」といっていい概念を形成した。これは貴族の精神性や対外的な影響力の違いを示すものである。今回の講義では、そこで武士の対極にある貴族の「貴族道」について理解を深めていく。(全9話中第8話)
時間:10分38秒
収録日:2023年10月20日
追加日:2024年2月23日
≪全文≫

●貴族といえるのは位階の「三位」以上だけ


 それでは、摂関体制とか摂関家の成立の問題を扱いましたので、その中核を担う人々ですが、言うまでもなくこれを「貴族」と呼ぶわけです。

 奈良時代も含めて、貴族という言葉の「貴」という概念は、漢語の「貴」から来ているもので「とうとい」という意味です。この「とうといやから」が貴族です。貴い人たちを貴族と、漠然となんとなくイメージしますが、制度的に律令の時代のシステムでの「貴」というのは、本来は位階があり、ご存じのように官職とか位階です。この位階の中で厳密にいうと、そのストライクゾーンの貴族は「三位」以上のなのです。

 位というのは天皇との距離感ですから、天皇に一番近い人のことを一位、これは大臣クラスです。一位や二位、三位となり、一、ニ、三というように数字がどんどん多くなるに従って、天皇との距離が遠くなるわけです。したがって、数字が一位、二位、三位という、このレベルは天皇を囲繞(いにょう)し、天皇を囲んで政をしていく朝廷の内部における中核的な人脈の人々を、貴族というのです。ですから、一位、二位、三位というのが貴族の中の中枢で、これを「貴」と呼ぶわけです。

 ところが、四位や五位というのは、この貴のもっと外側のアウトゾーンに位置している貴族たちで、広い意味での貴族です。これを貴族に通ずるという意味から、「通貴」と呼びました。そういうことで、四位や五位の位階の人々を通貴といいます。この通貴の人々と貴という人々、これが広い意味での貴族の集団ということになるのです。

 さらに、国政、国の中軸にあって政をする人々は、一位、二位、三位という貴のグループの人々です、そして四位、五位は一般的には「中下級貴族」と呼んで、これは中核的な国の政、中央政治ではなく地方政治に関わる人々です。ですから、前にお話しした道理の船と非道の船云々の中に出てくる受領、国司のポストは、だいたい五位のグループの人々たちで、彼らが地方の国の政を担っていくということになるわけです。


●王朝国家の中でイメージ化しやすい「貴族道」


 このような形で、貴族たちは朝廷の内部において、天皇に近い形で動いていくわけです。そうする中で、いわば貴族と別立ての枠組みの人たちがいます。普通は、五位の外側に位置している人たちですが、これは明瞭な規定があるわけではないのですが...

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