徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論
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なぜ家康は東照大権現になったか…その意味と天海の狙い
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(2)徳川将軍家が最上位に立つデザイン
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
「一元化をはかり、明確に上に立つ」――徳川幕府が260年の天下泰平を築けた1つの要因は、力の一元化を図り、トップは自分だということを明確に見せたことにある。鎌倉幕府も室町幕府も、そこが曖昧だったことに加え、朝廷という権威をうまく操ることができなかった。対して徳川家康は、「朝廷よりも自分が上だ」と思わせるデザインをつくることで権威獲得に成功したのだった。 (2022年9月14日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「徳川家康の果断と深謀~その指導者論・組織論」より、全5話中第2話)
時間:11分40秒
収録日:2022年9月14日
追加日:2022年12月6日
≪全文≫

●曖昧だった室町幕府のストーリー


 次に「一元化をはかり、明確に上に立つ」。要するに、力を分けずに、しかも徳川家康あるいは徳川将軍家当主がトップなのだという形をはっきり見せる。これは、幕府を開くというくらいであれば、(会社を創業するなどでもいいのですが)徹底してやらなくてはいけません。

 弟が信頼できるとか、立てなくてはいけない人がいる、などと言って自分が不自然に身を引いたり、力を分ける素振りをしたりして美徳を示そうなどということはしないで、むしろはっきり「俺だ」ということが大事である。家康という人は、そばに学者を置いて、大変勉強家だったと思います。特に関ケ原の後、家康は周りに多くの学者を置いて、いつも勉強をしている。儒学などを本人がものすごく勉強しているわけです。そういうことを考えると、歴史に学ぶこともとても多い人だったと思います。

 南北朝時代から室町幕府の初頭にかけて、足利尊氏は後醍醐天皇を立てようとしました。うまくいかないから、もう一人の天皇を立てて、天皇を2人にしてしまう。北朝を立てて、南朝に対抗する。そうやって天皇が2つに分かれて、片方の側に足利家がつき、室町幕府もつくかというと実際の室町幕府の初期の状況を見れば、尊氏と直義の兄弟争いも熾烈で、要するに足利家の中でも北朝と南朝に割れて争う。尊氏が北朝だったはずなのに、一度南朝に行ってしまうなど、もう滅茶苦茶なストーリーなのです。

 誰が本当に偉くて、どこに権威を集めたいのかということがとても曖昧です。朝廷と将軍家(幕府)があり、しかも朝廷が2つある。原則、京都にあった北朝と、吉野の山奥に引っ込んでいるけれども、たまに戦の調子がいいときは都のほうに迫ってくる吉野朝(南朝)。それを行ったり来たりする中で足利尊氏は結局、室町幕府の初代将軍というけれども、どこに力が集まっているのかを演出できないまま終わってしまう。

 その反省から、3代将軍義満が本来の初代将軍がやるべきことを初めて実現します。しかし、その後がもたない。これは、やはり室町幕府のつくられ方、ストーリー、歴史的な環境、朝廷の使い方、こういったものが全て曖昧で不十分であったからです。結局、室町幕府の足利氏が権威を持つといった体制は、うまくいかなかったわけですね。


●天皇の雅を模倣しようとし...


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