徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論
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現実を律する者が一番偉い――徳川家康が重んじた儒教思想
徳川家康の果断と深謀~その指導者論・組織論(4)家康と儒教
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
それまで日本は仏教を重んじてきたが、徳川家康は儒教に重きを置いた。それは儒教が徹底したリアリズムであり、現実世界を治めるものがもっとも偉いのだとしたからである。そしてそれに加えて家康が取り入れたのが「東照大権現」だった。家康が日本の中で権威を獲得したそのシステムを解説する。 (2022年9月14日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「徳川家康の果断と深謀~その指導者論・組織論」より、全5話中第4話)
時間:15分15秒
収録日:2022年9月14日
追加日:2022年12月20日
≪全文≫

●古くから日本で親しまれてきた仏教


 家康と儒教の話に移りたいと思います。

 例えば武家の学問としては、藩校や林家、湯島の聖堂が知られています。それまでの、例えば足利もお寺は建てました。もちろん江戸幕府(徳川家康)もお寺をつくって大事にする、仏教を大事にするということはあったわけです。江戸幕府(徳川将軍家)にとって大事なお寺は、芝の増上寺ですね。または上野に寛永寺をつくる。もちろん仏教は大事だという形はつくるわけです。

 ですが、例えば室町幕府が一所懸命、京都にお寺を建てるとか、織田信長が延暦寺や本願寺と戦うなどを考えていただければ分かるように(「キリスト教を代わりに」とどこまで思っていたかはともかくとして)、日本の中世的な宗教の権威を徹底的に破壊し、その後どうするかというデザインを信長自身が十分に施す前に死んでしまった。豊臣秀吉の場合も「神仏を篤く」というところがあったと思います。

 これは源氏もそうです。鎌倉幕府はやはり仏教ですよね。日蓮が鎌倉幕府を丸ごと日蓮宗に帰依させようと政治的にいろいろと行い、失敗して流されたりするわけですが、やはりどちらかというと禅宗です。鎌倉の由緒正しいお寺を思い出していただければ、禅寺が多いわけです。禅で瞑想して悟りを得るという方向、武家の血みどろの抗争の中での悩みは禅の修行で祓うといった方向で、皆が禅宗に行くわけです。

 その前の平安時代の公家、あるいは皇族や天皇は、見てもらえば分かるように、上皇が法皇になったりします。仏門に帰依してお坊さんになるから法皇になるのです。あるいは、さらに遡っても、聖徳太子は仏教ですね。聖武天皇は、大仏や仏教による鎮護国家を目指す。『論語』は日本の古代のうちに入っていたわけですが、奈良時代、平安時代の朝廷も、鎌倉時代の鎌倉幕府も、南北朝時代も、室町時代も、織田も、豊臣も、儒教を重視するということはありませんでした。


●徳川幕府の時代、武家の学問は仏教ではなく儒教


 日本の中で儒教は、漢字と一緒に『論語』も入ってきたくらい古いし、儒教を勉強する人もいたわけですが、儒教が政治と結びついてきたことはありません。中国はそうだったわけです。中国の歴代の王朝は儒教でできていた。儒教(四書五経)をよく勉強し、皆がテストを受けて登用され、国家官僚になるのが中国の科挙のシステムです。

 日本...

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