徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
松平、得川、徳川…その違いにみる家康の権威のつくり方
徳川家康の果断と深謀~指導者論・組織論(3)徳川と松平、御三家と御三卿
歴史と社会
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
徳川家康がデザインしたシステムの中で、とても巧みだったことに「名前」がある。松平家から一部の限られた者だけが徳川姓になることができた。しかも、その背景として仏教でも儒教でも重要な「徳」の字を選んだところにも、家康の権威のつくり方に学ぶ意味は大きい。ここでは徳川家が描いた姓をめぐるシステムの秘密に迫る。 (2022年9月14日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「徳川家康の果断と深謀~その指導者論・組織論」より、全5話中第3話)
時間:10分28秒
収録日:2022年9月14日
追加日:2022年12月13日
≪全文≫

●徳川姓になる者、松平姓のままの者


片山 そのあと、「徳川と松平」という、またおかしな話があります。皆さんもご存じだと思いますが、徳川という姓は途中から使われます。徳川家康という人は、松平だったはずなのに、途中から徳川になるわけですね。

 しかも、松平家が全て徳川になったのなら分かりやすいのですが、改姓したならともかく、松平家の中で、当主とその核心的な部分(というのも変ですけれど)だけが徳川になります。家康の子どもでも、もちろん他家に養子に行った人もいます。また徳川姓になってもいいのだけれども、松平姓のままである人もいるわけですね。

 ということで、松平家だったはずの者が、当主が徳川を名乗るようになり、松平一族全部に徳川の姓を与えないで、一部分だけが徳川になるという、おかしな仕掛けをつくった。

 ただ、これはなぜかというと、松平家は官位が欲しかったからです。そこで朝廷との「官位は由緒正しい血筋でないと渡せない」というやりとりの中で、「実は源氏だ」「実は藤原氏だ」などと(悪い言い方をすれば)もともとの出自がよく分からない松平家が一生懸命、系図を捏造する。そうして、朝廷の公家や関白など、いろいろなところにお金を渡して系図を認めてもらって、位を貰うわけです。これが京都の朝廷の一番重要な収入源だったのです。

 武家の時代にどうやって食べているかというと、官位をあげるのです。だいたい戦国大名などというものは、(大変言葉は悪いのですが)どこの馬の骨か分からない人が下剋上でのしあがってくる。でも、然るべき位を貰おうとすると、「いや、この位は源氏でなくてはいけない」「平家でないといけない」「藤原氏でないといけない」となる。源氏や平家ということは、もともと皇族の血筋でないといけません。

 でも、実際はそうではない。そうではなかったら、系図を捏造するしかない。「おまえ、これはインチキだろう」「いやいや、インチキではありません。よろしくお願いします」などと言って、関白、太政大臣、大納言、中納言、そのときの武家伝奏役などが、武家の位を斡旋する。下の公家から上の公家まで全ての者に、「よろしく」といった工作をする。戦国大名の家来などでも、京都に行って「よろしく」といったことを行って、無事に位を貰えると「うちの殿さまもそれなり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子