徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
改革派の松平春嶽も評価した“理想的な将軍”徳川家斉
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(3)江戸の文化が爛熟した“理想的な時代”
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
徳川家斉の時代は安定した時代だった。家斉の治世は、風紀の乱れにつながるなどさまざまなマイナス面をはらみながらも、結果的に長期的に政権を持続させることができたからだ。そして安定したこの時期に、江戸の文化は爛熟期を迎えることができたのである。改革派の松平春嶽や栗本鋤雲などの書き残したものからも、ある意味で家斉が“理想的な将軍”であったことをうかがい知れる。(全4話中3話) ※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:13分33秒
収録日:2020年12月14日
追加日:2023年8月9日
≪全文≫

●内政の決定的破綻には至らなかった「安定した時代」


―― 徳川家斉はそういったことを行いながら50年も将軍の地位を守れるのはすごいことですね。それほどこの時代(1787年から1837年)は、最後のほうは飢饉がありますが、すごく安定した時代だったのですね。

山内 安定した時代なのです。地方や農村ではもちろん飢饉や、あるいは浅間山の噴火をはじめとする気候変動などの影響を受けた自然災害も出てくるけれど、家斉の時代は、それに加えて都市の成熟がありました。とりあえず都市へ流入することによって、都市で下層民を形成しつつ、一応、最低限の生活を営む(ことができる)といったパターンが出てくる。これは後に水野忠邦が厳しく、もとへ戻そうとして改革を行うことになるのだけれども。

 基本的に家斉の時代は、われわれからすると、非常に安定しているところがあるのです。内憂外患ですが、決定的には内政が破綻しない。財政破綻寸前なのだけれど、そこで巧みに何をするかというと、(幕府の常套手段だけれども)金銀(通貨)の改鋳です。

 そうして金の比、銀の比を下げていく。軽くしていく。それによって「出目」(でめ)というのですが、目が出る、出目が生じる(差分の利益が出る)。その出目を基礎にして、幕府財政の赤字を補填する、あるいは幕府経費を浮かすといったことを行っていく。

―― 今の財政金融政策に近いですね。インフレ政策を取りながら、財政も膨らませていくと。

山内 だけど、それは当然、いずれは限界がくるのです。こういった問題は結局、流通にも影響を与えてきますから。ただ、本格的に破綻に近づくのは、家斉の時代でも晩年になります。

 それを引き受けて結局、大きな改革を行わなければということで、水野忠邦による「天保の改革」になる。ただ家斉の治世では、まだ放漫財政でやりくりしていた。非常に幸せな男なのです。

―― そうですね。ものすごく運がいいということですよね。

山内 そう、運がいいのです。


●風紀は乱れたが、江戸の文化が爛熟した50年間


―― そうした中、文化、文政という時代に江戸の文化が爛熟します。歌舞伎にしても、浮世絵にしても、あらゆるものが出てきます。結局、この50年間が江戸時代の中で傑出していて、江戸庶民にとってはいい時代だったという理解でいいのでしょうか。

山内 基本的にはそうだと思います。しかし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政