徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大奥からもっとも嫌われた男・徳川斉昭の致命的な欠陥
徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭(4)斉昭と水戸藩、その個性と宿命的矛盾
なぜ水戸藩主・徳川斉昭は大奥からもっとも拒否されたのか。一般的には優れた政治家として知られる斉昭には見逃せない致命的な欠陥があり、最終的に幕府政治から外されることになる。それは彼の側近である藤田東湖が心配していた点でもあるが、実は水戸藩自体が非常に個性的で、それがゆえに宿命的に矛盾する構造を抱えていたのだ。(全4話中4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:13分28秒
収録日:2021年3月8日
追加日:2023年10月24日
≪全文≫

●大奥から一番警戒された徳川斉昭、その致命的な欠陥


山内 徳川斉昭についてはもう1つ、欠陥がありました。

 政治を行っていく場合の非常に大きな勢力として、徳川幕府の中には、「表」の老中を頂点とした権力構造があります。そして、「奥(中奥)」というのですが、将軍の日常の空間、執務をとる場がある。将軍と御側御用取次、あるいは側用人、あるいは御側衆という側集団(近臣集団)が取り持っている権力空間があります。

 それから、もう1つある。江戸城という空間で見ると分かるように、もう1つは「大奥」です。「大奥」は御台所を頂点とし、それから、「中臈(ちゅうろう)」という御台所のお付きがいるのですが、その「中臈」が一番の高級(女中集団のトップ)にいる。このような女性の意思といったものが、さまざまな人間関係、血縁関係、それから政治のトップである老中との人間関係を含めて影響してくる。 自分の産んだ子や自分が仕えた子が将軍や世継ぎになっていく、先の将軍の血筋である、先の将軍の側室である、などといった筋を無視した幕府政治はあり得ないのです、どんなことをしても。

 だから、この3つを組み合わせ、きちんと統御できる人間が幕府政治の担い手になっていくのです。意外とやっていないようで、松平定信にしても、水野忠邦にしても、阿部正弘はもちろんのこと、これを行わなければ老中は務まらないのです。

 その大奥から一番警戒され、拒否された人間は誰だと思いますか。

―― 慶喜ですか。

山内 慶喜は彼個人ではかわいそうなくらいに「かわいい君が来た」というほどでした。だから、斉昭です。

―― 斉昭なのですね。

山内 斉昭は質素倹約を徹底化したという点で「こんな人が(来られては困る)」ということもあるのですが、もう1つ、史料に出てくるのは、彼の女性関係です。徹底して彼は「なぜこうなのだ」というほど、女性関係が乱脈なのです。

―― 乱脈なのですね。

山内 (例えば)11代将軍・徳川家斉が思し召しだった京都からやってきた「唐橋」という女中がいます。唐橋が水戸に遣いで来た時に、斉昭が唐橋を奪ったということから始まるのです。すると家斉が怒ってしまう。

―― それはそうでしょうね。

山内 それで、ここが面白いところなのですが、「唐橋を京都へ戻せ」と言って、京都へ戻す。実は水戸の中でかくまったのだけれども、とに...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎