田沼意次の革新力~産業・流通・貨幣経済
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
貨幣不足とリフレ・デフレ政策…田沼以前の日本経済に注目
田沼意次の革新力~産業・流通・貨幣経済(2)田沼以前の経済状況
歴史と社会
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員/YODA LAB代表/金融・経済・歴史研究者)
田沼時代、耕作面積が頭打ちとなる中で生産性向上が進み、経済圏が多極化した。そうした中、大坂一極集中の物流網からやがて地方同士で流通させるネットワークが生まれ、江戸地回り経済圏へと発展する。今回は、そうした農業生産性の変化、物流網の発展、貨幣政策について、貨幣不足が経済に与えた影響、リフレ・デフレ政策の変遷と合わせて解説する。(全6話中第2話)
時間:9分32秒
収録日:2025年1月28日
追加日:2025年6月6日
≪全文≫

●農業の生産性向上と名産品の台頭


 さて、次に耕作地の単位当りの収穫、あるいは一人当たりの生産量の推移、すなわち農業の生産性について見ていきます。

 青い線は実収石高、緑の線は実収石高を耕作面積で割ったものですが、これらは双方とも右肩上がりで上昇しています。つまり前のページ(資料)と合わせてみると1750年あたりから耕作面積は頭打ちになるも、単位当たりの収穫高は上がっており、生産性が向上していることが見てとれます。

 この生産性向上は単位当たりのコメの収穫高が上がったということもありますが、価値の高い他の農産物、(例えば)各地で名産品と呼ばれるようになったものが生産されるようになったという背景もあると思われます。例えば大豆、菜種、綿などであり、味噌醤油、油、織物などの原料になるものです。

 赤い線はこれを人口で割ったものなので、一人当たり生産量となります。1650~1700年にかけて一人当たり生産量が落ち込んでいるように見えますが、人口、実収石高ともに推計値に基づくものなので、これほどまでに一人当たり収穫高が落ちたのか定かではありません。

 ただおそらく、大きな流れの中では、人口増加に耕作面積の拡大が追い付かない時期があり、一時的に生産性が停滞するような状況があったのだろうと思います。そしてその後、人口は頭打ちになるも生産性が上がることで一人当たり収穫量が拡大し、幕末にかけては再び人口も増加していった、ということはいえるかと思います。


●大坂中心の物流網から地方経済圏へ


 さて続いてのページ(資料)では、江戸中期にかけての農工産物の生産拠点と物流網の変化について見ていきます。

 図表左側、江戸初期から中期にかけては大坂に中央市場があり、そこに全国の物資が集まる物流網が成り立っていました。江戸は人口が拡大したとはいえ大坂に集まったものを取り寄せる消費市場でした。

 その後、上段中ほどに例として挙げたように、農工産物を各地で生産するようになると、これを地方同士で流通させるようなネットワークも出てきます。地方の中核都市が発展してきたということで、それが右側、江戸中期以降の物流網の姿です。

 また、江戸の周辺、今の埼玉、千葉あたりでも消費地江戸に生産品を届ける経済圏が...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部