徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉
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殿席でのインフレ…“子だくさん”徳川家斉が招いた混乱
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(2)家斉への反感と家格の変動
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
11代将軍・徳川家斉の行った「自分の血を各家に入れていく」という方針は、各所にひずみをもたらすことになる。“子だくさん”ゆえに、もしかしたら次期将軍になるかもしれないという資格を持つ人間が増えてしまい、殿席においてはより良い扱いを求められ、家格においては過度な動きを誘発することになってしまったのだ。では実際にどのような混乱が生じたのだろうか。(全4話中2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:10分44秒
収録日:2020年12月14日
追加日:2023年8月2日
≪全文≫

●大名のランクは「国持かどうか」が重要


山内 (徳川家斉が行った「自分の血を行きわたらせる」施策について、マイナス面の)二つ目は、ものすごくいびつな構造が起きるのです。将軍の血を受けた、少し間違えれば次期将軍になるかもしれない資格を持つ人間たちばかりが、殿様として来るわけです。そうした人間が来たら、例えば従来の蜂須賀や南部などの格、あるいは鍋島や浅野などの格を変えないといけないわけです。

 どういうふうに変えるか。江戸時代の大名のいろいろなランキングは複雑で、われわれがよく用いる方法は、「親藩、譜代、外様」という分け方です。それから二つ目は、「石高」で分けます。103万石の前田が一番上で、次は70数万石の薩摩、次は64万石の伊達といったように。このように石高で分ける方法もあるけれど、これは非常にアマチュアリッシュ(素人っぽい)な見方です。それを別の言葉で置き換えると「国主、国持であるかどうか」、あるいは「準国持、準国主であるかどうか」。この「国持かどうか」が大きいのです。

 この場合の国持、国主とは、例えば「薩摩を持っている(あるいは薩摩の一国を持っている)」「筑前を黒田が持っている」「土佐を山内が持っている」といったように律令制からこのかた、一国(国の単位)をそのまま領地している(所領として持っている)ところもあります。

 けれども、例えば肥前の鍋島とか。また、実は肥後の細川は、相良(さがら)が入っているので一国ではありません。それから伊達は、陸奥一国ではないでしょう。一国(だけ)を領地としていなくても、陸奥の伊達、あるいは細川、鍋島のようなものは、浅野が安芸国を一国と備後も一国を持っているのと同じように、「国主」と呼ばれたわけです。

―― なるほど。

山内 反対に、小さい国を持っている領主もいます。対馬の宗(そう)や、それから松浦は壱岐を持っている。それから、志摩を持っている鳥羽城主など。これらはいずれも国を持っているけれども、「国主」とはいわないのです。

 この「国主であるかどうか」が、武家大名ランキングで非常に大きい一つの基準になるのです。これに石高が組み合わさるのですが、「国主」であることは圧倒的に大きい。その国持に準じる格があるのが、柳川の立花や、伊予の伊達(伊達家の分家であり、政宗の長男・秀宗から始まった家)です。そういう家が国持格、国...

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