源氏将軍断絶と承久の乱
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
唐船建造は日宋貿易のため?…増大した源実朝の将軍権力
源氏将軍断絶と承久の乱(7)将軍権威の増大と唐船の建造
坂井孝一(創価大学文学部教授/博士(文学))
実朝が親裁(自ら裁決を行なう)する政治は非常に安定し、将軍権力は、後鳥羽上皇のバックアップを受けた「政所別当九人制」により、ますます盤石となった。そのような折、実朝は鎌倉へ拝謁に来た宋の工人・陳和卿から「将軍の前世は、医王山の長老だ」と言われ、渡宋して医王山を参拝するという名目で唐船の建造を命令する。だが、その命令の裏には、日宋貿易への思いがあったのではないだろうか。(全12話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分40秒
収録日:2022年7月13日
追加日:2022年10月23日
≪全文≫

●「政所別当九人制」の導入


―― そこで(和田合戦以降)、(源)実朝の政治が非常に安定して力強くなっていくということですが、ここで「唐船を造る」という話が出てきます。なぜ唐船かというのがわかりにくいのですが、先生、これはどういうことになるのですか。

坂井 これは『吾妻鏡』 に書かれている記事を100パーセント信用することはもちろんできませんので、ある程度の情報は得つつ、客観的に言ったらどうなのだろうかということを考えていかなければいけません。

 建保4(1216)年になると、いくつか変化が生じます。一つは後鳥羽上皇が実朝を官位の面で強力にサポートしはじめるということ。私は後鳥羽上皇を「稀代の帝王」と呼んでいますが、万能の帝王であり、朝廷のほうでも絶大なる権力を持っています。その後鳥羽上皇が完全に後ろ盾になったというのが誰の目にも分かるような状況が出現して、実朝はさらに将軍親裁の権威を増大させるようになっていきます。

 それは、直訴を受け付けるとともに、(鎌倉幕府の)政所の別当に院近臣の御家人を加えるようになったことです。御家人は、鎌倉殿(将軍)と主従関係を結んでいますが、京都住まいの御家人は同時に上皇との間でも、主従関係とは若干違うかたちですが、近臣として仕えるということを行っている時代です。これは学問上「両属関係」と言いますが、そういう院近臣にはかなり権威があります。このような御家人のなかでも源氏の一門で、院近臣になっているような人たちを、(鎌倉幕府の)政所の別当に加えたわけです。

 相対的に(北条)義時たちの地位は下がりますが、それを合わせて9人になる。9人も船頭がいると、船は山に登ってしまうのではないかと普通は考えます。しかし、当時の政所は、たとえば摂関家や京都の有力貴族の政所などは、10人の別当がいるのは当たり前でした。むしろ、政所下文 (まんどころくだしぶみ)にそれだけ何人もの別当が肩書きを連ねていくことが、その下文の権威を上げることだと考えられた時代なのです。

 そこで後鳥羽上皇の後ろ盾を強力に得ている実朝は、政所の権威も高めるために、院近臣の御家人たちを加える。そして9人も別当として署判させるというような策に打って出る。これによって、将軍の権威は非常に増大します。


●宋の工人・陳和卿と実朝の対面


坂井 将軍の権威が増大していた建保4(1216)年...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄