源氏将軍断絶と承久の乱
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「源実朝は文弱」は誤解…『金槐和歌集』に込めた想いとは
源氏将軍断絶と承久の乱(6)源実朝の政と和歌
歴史と社会
坂井孝一(創価大学文学部教授/博士(文学))
源実朝を歌人として知る人も多いだろう。和田合戦直後に彼が編んだ『金塊和歌集』は後世の評価も高い。だが、それだけに実朝を「文弱」と指摘する傾向も続いてきた。しかし、和歌は幕府のトップとして朝廷のトップと渡りあう彼にとって必須の「政(まつりごと)のツール」であった。後鳥羽上皇に贈った歌から実朝の深い思いが伝わってくる。(全12話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分18秒
収録日:2022年7月13日
追加日:2022年10月16日
≪全文≫

●和歌に堪能だった武士たち


―― そういうかたちで侍所別当だった和田義盛が倒れてしまう時代に入るわけですが、合戦の直後には(源)実朝が『金槐和歌集』を出すことになります。実朝というと、なんとなく一般には「和歌をやっていましたね」「蹴鞠をやっていましたね」というような話が非常に印象深いと思います。しかし、坂井先生は実朝が実はひ弱な将軍ではなかったとお書きになっています。これは、どういうことになりますでしょうか。

坂井 確かに(源)頼家に比べて実朝というのは、運動能力の点でちょっと劣っていたのか、気性の荒々しさが違っていたのか、武芸を自分自身で行うという点ではそれほど優れたところはなかったと思われます。その代わり、和歌や蹴鞠のようなものには長じていました。それが、明治以降の近代人からすると、「武士なのに何を和歌など詠んでいるのだ」「文弱だろう」というイメージで捉えられてきたわけです。

 しかし、そうではありません。たとえば北条泰時や和田朝盛も和歌を詠みますし、「宇都宮歌壇」といって、宇都宮氏などは自分たちの歌壇をつくるほど和歌に堪能でした。武勇に優れた梶原景時や、その息子で豪傑として非常に有名な景季も和歌を詠んでいるのです。だから、武士も和歌を詠むのです。

―― 武芸とともに、大和心というとおかしいですが、「情」の部分もよく分かっていないといけなかったということでしょうか。

坂井 そうですね。「文武両道」という言葉がありますが、そういう武士たちも、たくさんいました。たくさんと言うとやや大袈裟ですが、少なからずいました。

 さらに実朝の場合は、幕府の頂点に立っているトップですから、当然、朝廷のトップと交渉しなければいけない。治天の君である後鳥羽上皇 、土御門天皇から順徳天皇にいたる天皇、さらに摂政や関白のような上流貴族とも交渉をするのが、鎌倉殿、征夷大将軍である実朝の務めであるわけです。

 武芸一辺倒で、東夷(あずまえびす)で、和歌も詠めないのか、蹴鞠もできないのかということになると、やはり馬鹿にされてしまうわけです。


●「政(まつりごと)のツール」として和歌を詠んだ実朝


坂井 そもそも和歌というのは、神々や仏様、神仏を喜ばせる大和言葉なんですよね。そのことによって天下泰平というものをつくりだそうというツールでもある。

 かつて私は、これを「...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
第2の人生を明るくする労働市場改革(2)前提が崩れた日本的雇用慣行
日本人全員ではない…日本的雇用慣行のターゲットは誰?
宮本弘曉
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子