源氏将軍断絶と承久の乱
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「源実朝は文弱」は誤解…『金槐和歌集』に込めた想いとは
源氏将軍断絶と承久の乱(6)源実朝の政と和歌
坂井孝一(創価大学文学部人間学科 教授)
源実朝を歌人として知る人も多いだろう。和田合戦直後に彼が編んだ『金塊和歌集』は後世の評価も高い。だが、それだけに実朝を「文弱」と指摘する傾向も続いてきた。しかし、和歌は幕府のトップとして朝廷のトップと渡りあう彼にとって必須の「政(まつりごと)のツール」であった。後鳥羽上皇に贈った歌から実朝の深い思いが伝わってくる。(全12話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分18秒
収録日:2022年7月13日
追加日:2022年10月16日
≪全文≫

●和歌に堪能だった武士たち


―― そういうかたちで侍所別当だった和田義盛が倒れてしまう時代に入るわけですが、合戦の直後には(源)実朝が『金槐和歌集』を出すことになります。実朝というと、なんとなく一般には「和歌をやっていましたね」「蹴鞠をやっていましたね」というような話が非常に印象深いと思います。しかし、坂井先生は実朝が実はひ弱な将軍ではなかったとお書きになっています。これは、どういうことになりますでしょうか。

坂井 確かに(源)頼家に比べて実朝というのは、運動能力の点でちょっと劣っていたのか、気性の荒々しさが違っていたのか、武芸を自分自身で行うという点ではそれほど優れたところはなかったと思われます。その代わり、和歌や蹴鞠のようなものには長じていました。それが、明治以降の近代人からすると、「武士なのに何を和歌など詠んでいるのだ」「文弱だろう」というイメージで捉えられてきたわけです。

 しかし、そうではありません。たとえば北条泰時や和田朝盛も和歌を詠みますし、「宇都宮歌壇」といって、宇都宮氏などは自分たちの歌壇をつくるほど和歌に堪能でした。武勇に優れた梶原景時や、その息子で豪傑として非常に有名な景季も和歌を詠んでいるのです。だから、武士も和歌を詠むのです。

―― 武芸とともに、大和心というとおかしいですが、「情」の部分もよく分かっていないといけなかったということでしょうか。

坂井 そうですね。「文武両道」という言葉がありますが、そういう武士たちも、たくさんいました。たくさんと言うとやや大袈裟ですが、少なからずいました。

 さらに実朝の場合は、幕府の頂点に立っているトップですから、当然、朝廷のトップと交渉しなければいけない。治天の君である後鳥羽上皇 、土御門天皇から順徳天皇にいたる天皇、さらに摂政や関白のような上流貴族とも交渉をするのが、鎌倉殿、征夷大将軍である実朝の務めであるわけです。

 武芸一辺倒で、東夷(あずまえびす)で、和歌も詠めないのか、蹴鞠もできないのかということになると、やはり馬鹿にされてしまうわけです。


●「政(まつりごと)のツール」として和歌を詠んだ実朝


坂井 そもそも和歌というのは、神々や仏様、神仏を喜ばせる大和言葉なんですよね。そのことによって天下泰平というものをつくりだそうというツールでもある。

 かつて私は、これを「...

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