平安時代の歴史~「貴族道」と現代
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
院政か親政か…日本史で重要な政治システム「治天」とは
平安時代の歴史~「貴族道」と現代(5)摂関政治から院政へ
関幸彦(歴史学者/元日本大学文理学部史学科教授)
平安時代後期の摂関政治において、特に摂関家の女子力が政治的影響力を持つようになる。天皇の血統を保持する上で摂関家の女子たちが重要な地位を占めたからだ。そうして、当時非常に大きな役割を担った摂関政治だが、やがて「院政」という新たな政治システムが登場してくることになる。これは「天皇親政」に対する言葉で、そこで関氏は「治天」という重要なキーワードを挙げているが、それはどういうことなのか。今回は、日本の歴史において重要な政治システムの転換点となった摂関政治から院政への移行について解説する。(全9話中第5話)
時間:12分51秒
収録日:2023年10月20日
追加日:2024年2月2日
≪全文≫

●女子力という摂関家最盛の最大の秘訣


 重要なことは、男の子を産むこと、男性が跡継ぎになること、これを良しとする価値観がなんとなく日本社会の中でも蔓延していることです。歴史的にいえば、男子尊重の意識、家を継ぐという意識は、実は武家の時代になってから定着していく考え方で、平安時代、特に(平安)後期の王朝の時代は、男子はもちろん、天皇家とか限定されたときは跡継ぎの皇子、これが前にいった血のサラブレッド性からいえば意味を持ったのです。

 しかし、多くの貴族たちは、男の子ということも一方では必要でしたが、やはり女子力というものがことのほか重要だったのです。摂関政治を見ていくと、最大のポイント、関家最盛の最大の秘訣は女子力にあるわけです。

 つまり、大臣あるいは摂関家の女子たちが、天皇家に入内します。つまり天皇のもとに入内するわけです。これによって、その女子に皇子が誕生すれば、外戚の地位を確保できるのです。その外戚の地位というものが天皇の権威に付随して、一種の政治権力をその家が持つことになるという、こういう循環となるわけです。

 ですから、摂関政治というものが、わが国にとって1つの大きなターニングポイントになっていきます。これは政治の請負という問題が連動するわけですが、一方では、天皇家を藤原氏がリンクしながら再生産していくのです。いわば血の再生産、貴種の再生産という意味では、摂関家の女子が天皇に入内し、その結果として皇子を産んでいくということです。これが幾重にも、何代にも続いていく流れになるのです。

 皆さんに示している天皇系図があります。この天皇系図をざっとご覧いただいて分かると思いますが、つまり第60代の醍醐天皇以下のローカルに因む天皇名を持つ天皇たちは、一条天皇とか、三条天皇とか、後一条天皇というように、いわば京都の地名に由来する天皇名の天皇の母たちの血筋を見ていくと、圧倒的に多くは摂関家の女子です。この現実を見ても、摂関政治の持つ意味はことのほか大きかったということがお分かりになると思います。

 そのようなことで、われわれはその摂関政治の形成のされ方を見ながら、三平時代から三道時代の転換の中で、摂関政治がより請負というものに特化した形で、(すなわち)政治体制が日本国の現実の間尺に合ったというか、実態に合った...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
戦国合戦の真実(1)兵の動員はこうして行なわれた
戦国時代の兵の動員とは?…無視できない農民の事情
中村彰彦
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝