徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編
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斉昭、松陰の発想が是!? 阿部正弘の評価との違いに物申す
徳川将軍と江戸幕府~阿部正弘編(5)徳川斉昭の発想と阿部正弘の現実感覚
徳川(水戸)斉昭の発想は、まるで「昭和20年8月段階の大本営陸軍部、陸軍の参謀たちの作戦」のようだと山内氏は語る。一方、阿部正弘は決断までに時間はかかるけれど優れた現実感覚を持つ。相容れない両者についてどう考えたらいいのだろうか。幕府の中枢を担った彼らの政治家としての功罪を考える。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:8分09秒
収録日:2021年3月29日
追加日:2024年4月6日
≪全文≫

●水戸派の理想 vs 阿部正弘の現実感覚


山内 例えば早い話、徳川(水戸)斉昭をどうしてくれるのかと。非常にめざましい形で、水戸の老公(烈公)を、海防参与や事実上は将軍の顧問ということで幕府の中に入れたけれど、ああいう人を政策決定の場に入れていいのかと。こういう疑問は、人事の任用の時からありました。しかも徹底して反対したのは、他の譜代大名たち、そして幕府の実務官僚たちです。

―― 実際に一番被害を受ける人たちですね。

山内 そう。だから、川路聖謨などは水戸斉昭についてずいぶん面白くない感情を持っていたと思う。彼は、斉昭が隠居(蟄居)を命じられて逼塞していた駒込の下屋敷に出かけていって、ペリーの来航に関してのご意見を承るということで阿部の使者として行ったわけですが、さんざっぱら怒鳴られて、やり込められた。

―― けんもほろろにやられるわけですね。

山内 まさにそうです。しかし、その時点で本当に実際の政策として採り得るのはいったい何なのか。阿部正弘のように、慎重に国を開けていく。それに、斉昭の言うことはいいけれど、実際に戦争になったときに、本当にそれができるのかと。

―― それほどの軍備が、備えとしてないわけですね。

山内 ない。それから斉昭はよく「侍たちが強い」と言って、「陸戦になれば、こっちのものだ。だから上陸させればいい」「上陸させて、(陸戦を)やってみたら、こちらが勝つ」と言っていますが、この発想は昭和20年8月段階の大本営陸軍部、陸軍の参謀たちの作戦もそうでしたね。

―― まったくそうですね。本土決戦ですね。

山内 本土決戦。こちら(陸戦)でやって挑めば、「勝機は我にあり」ということです。もちろんこちらも同じ武器をもって、同じような補給等をもっていればそうだけれど、それが尽きて、兵器も何も相手にならないところで、それを言ってもね。

 最終的に私が斉昭に対して非常に懐疑的なのは、彼にはいわゆる国民的な視点や民百姓に対する関心といったものがすこぶる希薄だからです。それで実際、どうするのか。勝てもしないのに異国の軍隊と戦って、勝負はどうするのか。

 しかし、藤田東湖も「いや、任せろ」と言っています。「自分が船に上がってペリーと直談判する」、そして「白刃一閃」と「しらはのやいば」を出してくる。白刃一閃で、「ペリーの首級は見事に落ちん」などと言っている...

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