江戸とローマ~「父祖の遺風」と武士道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
私心を捨てる――幕臣・山岡鉄舟が体現した武士道
江戸とローマ~「父祖の遺風」と武士道(6)武士道の喪失と現代社会の問題
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
新渡戸稲造の『武士道』には、古代ローマの「父祖の遺風」に訴えるエピソードが多数盛り込まれていた。「義」を貫き、相手への思いやりを「惻隠の情」として表し、私心を捨て捨て身になることの大切さである。幕末には武士道を体現していた幕臣・山岡鉄舟がいたし、日本に7年留学していた中国の文学者・魯迅は「日本の誠実さを学べ」と説いている。こうした精神が日本から失われつつあるのではないか、というのは新渡戸の危惧でもあった。(全6話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分56秒
収録日:2021年7月16日
追加日:2022年12月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●「義」「惻隠の情」そして「私心を捨てる」


本村 ともあれ今回、私は改めて『武士道』を読んでみて、多々思うところがありました。父祖の遺風で貫かれたローマ人の考え方、つまり先祖に負けないように成長しようと思い、親も子供を立派な子どもに育てるために自分の手をかけてやるということ。それから、この意識は日本人よりもむしろローマ人のほうが強かったのではないかと思いますが、生き方として「義」を貫き、「惻隠の情」と言われるように相手に対する思いやりを深くし、どこかで私心を捨てる、捨て身になること。

 私は、この捨て身になることを非常に大事だと思います。捨て身になれない人間は、結局責任が取れなくなるのではないかと危ぶむからです。すぐれた大政治家といわれる人は、どこかで捨て身になっているところがあります。捨て身になれるから、責任を取れるということもあるのではないか。それは、やはり「私心を捨てる」という意味では非常に大事なことではないかと思うわけです。

 山岡鉄舟という武士道の一つの典型を体現した幕末の人がいます。彼は自分の名誉や金銭、私心を捨てることのできる人でした。西郷隆盛や勝海舟が、「彼とならば、本当に腹を割って話せる相手だ」と言っていたことの一番重要な要素として、私心を捨てられるかどうかということがあり、それが武士道というものを示していたのです。

 山岡の場合はあまりにも私心を捨てたがために、家の者が食うや食わずの状態に陥っていたところがあり、夫人は相当苦労されたらしいのです。そうだったのかもしれないけれども、武士道と父祖の遺風には非常に似たところがあり、それがローマ人と日本人に、ある種の誠実さを与えています。


●新渡戸稲造も危惧した「武士道の喪失」


本村 だから、オリジナリティはなくても誠実さをもってよりよいものをつくっていく。そこをごまかさない精神をつくっていくときに、ローマ人の父祖の遺風と日本人の武士道というものは非常に大きな役割をしてきました。

 今や日本社会にはその精神が失われていっていることを、新渡戸稲造も危惧していました。武士道というのは、もちろん今以上にみんなが身につけるようなものではないだろうけれども、やはりこれを失わないでほしいというのです。

 こういう精神が日本でかなり希薄になってきて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
藤田達生
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
編集部ラジオ2026(14)小宮山宏先生:知識の構造化のために
【10min名作探訪】テンミニッツ・アカデミーの意義と発想法
テンミニッツ・アカデミー編集部
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
知識の構造化のために(1)テンミニッツTVの問題意識
「知識の爆発」の時代、不可欠なのは世界の全体像の把握
小宮山宏
ウェルビーイングを高めるDE&I(1)人と組織を取り巻く環境変化:前編
人材はコストではない!人的資本経営が注目されている背景
青島未佳
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部