江戸とローマ~「父祖の遺風」と武士道
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大カトーが主張した父親の責任。古代ローマ人は教育熱心
江戸とローマ~「父祖の遺風」と武士道(2)ローマ人が大事にした子どもの教育
歴史と社会
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
騎士道精神はキリスト教道徳に付随するものだったが、武士道や父祖の遺風はそうではない。それらは多神教社会、すなわち多様な価値観を認めるローマと江戸の社会において育った価値観である。今回は、ローマの貴族一家において代々子どもの教育における要となってきた父祖の遺風についての一面を紹介する。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分37秒
収録日:2021年7月16日
追加日:2022年11月19日
≪全文≫

●先祖の彫像を見つつ学ぶローマ人の教育


―― 前回、先生から騎士道と父祖の遺風の比較の話がありました。ローマ時代は、末期ではキリスト教になるものの、それまでは一神教ではない社会が続いていました。騎士道の場合は明らかにキリスト教道徳があり、騎士道精神がそこに付随するものとして位置づけられると思います。一方、武士道は多神教の国の文化であり、父祖の遺風も多神教だった頃のローマ帝国の共和政の伝統を引いているところがあると思います。先生は、そのあたりの違いについてお感じになるところはありますか。

本村 なかなかいい指摘をしていただきました。神々を、つまり多様な価値観を信じている時代であり、一方、中世の騎士道はむしろ一神教的なキリスト教の中で興ったことだということですね。(その違いが、)私自身、武士道と比較するのは騎士道よりもむしろローマ人の父祖の遺風のほうが適当だと思ったことの一つのファクターではないかという気がします。

 父祖の遺風は、何よりも子どもを教育するときに、いろいろなことをどう考えるべきかの一つのよりどころになっています。子どもの教育は実に先祖代々行われてきたことで、ローマ人の場合はそれなりの家族を訪ねると、今でいえば写真があるように、自分の祖父やそのまた祖父の彫像が残っているわけです。

 彼らは(彫像を見ながら)日常的に「このおじいさんはこんなことをした。ひいおじいさんをこういうことをした」と話題にしている。それを聞きしながら、子どもたちは育っていくことになります。そのときの子どもたちの意識としては、やはり彼らに負けないような人になろうという意識が強かったのではないかということです。


●父親の教育責任を主張したローマの国粋主義者


本村 日本ではよく2世や3世議員になった人たちはたいしたことがないと目され、「親の七光り」と呼ばれたりします。しかし、ローマの元老員などを見ると、2世、3世どころか、5世、6世、8世がいくらでもいるわけです。

 そういう中、彼らの心に刻まれたのは、常に祖父や曽祖父、さらにご先祖様に当たる人たちがどういうことをして、どういう業績を上げたか、ということです。家の物語を聞かされてきた彼らが、それよりももっとましな人間にならなければいけない、という形で自分自身磨きをかけるところがあります。

 子どもたちが親やご先祖様の業績や話...

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