98歳の医師が明かす「生物学的教育論」
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ゆとり教育の間違いは幼年期と青年期の教育の違いにある
98歳の医師が明かす「生物学的教育論」(6)幼年期と青年期の教育の違い
井口潔(九州大学名誉教授/日本外科学会名誉会長/医学博士・理学博士)
しつけと同様に、教育の方法も幼年期と青年期では異なる。幼年期の教育は、パターン認識としてひたすら知識を蓄えていき、中学から高校にかけての青年期は、そうした知識を論理的に理解していく教育が望まれる。この違いにゆとり教育の失敗の一端があると井口潔氏は指摘する。(全9話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:8分32秒
収録日:2020年1月11日
追加日:2020年7月30日
≪全文≫

●幼年期の教育はパターン認識で進めていけば良い


―― 今のお話に関連して非常に得心したのが、昔の江戸時代の教育に関するお話です。江戸時代には、小さい頃に意味も分からないけれども論語などの漢文の素読、覚えさせることをさせる。まさに10歳とか、ある程度大きくなってから、これがどういう意味なのかという解釈を教えていく教育だった。

 例えば論語の言葉であれば、小さい頃に素読をすることで、体に染みついて処世訓となりますが、それをやらずに大脳新皮質ができあがる思春期ごろの年齢になってから素読をしても、処世術にはなっても処世訓にはならないというお話が、先生の本(『人間力を高める脳の育て方・鍛え方』)の中にありました。「なるほど、そういう違いがあるのか」と思って非常に納得しましたが、江戸時代の教育にはそういう良いリズムがあったということですか。

井口 江戸時代には、生物学的な知見というものはないけれども、長い経験から直感的に分かっていたのでしょう。例えば、最近では幼年期には簡単なことから教えようとする。しかし、幼年期ほど難しい漢字を覚える。6歳のときには、画数が多い漢字もすぐ覚える、直感で。パターン認識というものです。

―― 小さい子は、例えば電車の名前や車の名前など、関心を持ったことはとにかく無尽蔵に覚えていくところがありますね。

井口 車に関していえば、日産やトヨタなど、いろいろ種類があるやないですか。それも、トヨタや日産などと言葉で見ているのではなく、形で見ているわけです。

 そのとき、「あれ、日産よ」といったら、それを覚えているんです。だから、字を読んで見ているのではなく、大人が「これは日産」などといったものを、形としてすぐ覚えてしまうのです。それをやっているだけの話で、それがパターン認識。

 パターン認識というものは、言葉でやっているわけではなく、全部勘でやっている。だから、寺子屋に行って、「論語を大きな声で読みなさい」と指示すると、すぐ覚えるわけです。それは、ずっと忘れないですよ。そのようにして幼年期の教育は進めていけば良い。

 そうすると、論語を算盤にしても良いですね。算盤にしても、全部勘で分かるわけです。それが幼年期です。だから幼年期は、よく分からなくても、青年期まで十分に記憶が残るわけです。そして、青年期になると、子どものときに論語の暗唱をしてい...

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