98歳の医師が明かす「生物学的教育論」
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
なぜ「生まれたばかりの子はまだ人間ではない」のか
第2話へ進む
人間科学は宗教や哲学ではなく生物学的に人の心を見る学問
98歳の医師が明かす「生物学的教育論」(1)人間科学と危機感
井口潔(九州大学名誉教授/日本外科学会名誉会長/医学博士・理学博士)
昨今、教育に関する議論はますますヒートアップしてきており、学力だけではない人間力を高めることの重要性が各所で指摘されている。その中でも、井口潔氏の掲げる「生物学的教育論」というコンセプトは、非常にユニークなものである。第1話の今回は、外科を専門としてきた井口氏がどのような経緯で生物学的教育論に行きついたのか、その半生とともに語る。(全9話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分37秒
収録日:2020年1月11日
追加日:2020年6月25日
≪全文≫

●生物学的教育論と人間科学


―― 皆様、こんにちは。本日は、九州大学名誉教授で日本外科学会名誉会長でいらっしゃる井口潔先生に「生物学的教育論」というテーマでお話いただきます。井口先生、どうぞよろしくお願いいたします。

井口 よろしくお願いします。

―― 井口先生がお書きになった『人間力を高める脳の育て方・鍛え方』(扶桑社)という本の中で、この「生物学的教育論」が展開されています。冒頭の部分で、有名な数学者の岡潔先生の、非常に印象深い言葉が引用されています。『春宵十話』という随筆の冒頭にある、「(実際は人が学問をし、人が教育をしたりされたりするのだから、)人を生理学的にみればどんなものか、これがいろいろの学問の中心になるべきではないだろうか」という言葉が最初に引用されています。ここでいう、「人を生理学的にみる」、あるいは「生物学的にみて考えていく」というのは、どのように理解すれば良いのでしょうか。

井口 「人間科学」という言葉がありまして、大阪大学にはそれを専門とした講座があります。私の理解するところによると、その「人間科学」とは、生命の本質は遺伝子にあるという見方です。

 生命科学は、極微の世界ということで遺伝子的なことを研究するわけですが、それに対して、マクロの世界で人間をみるというのが人間科学ということのようです。私は、そういう意味ではなくて、人間を普通は宗教や哲学で考えるところを、生物学的にみるものが人間科学だと思っていたのです。

 ところが、これは少し語弊があるかもしれませんが、大阪大学の人間科学講座では、ある人が「人間科学」といっても学生を集めなければならないので、そうすると、学生はあまり高尚な概念を持ち出しても分からないので、「人間関係学」としようと考えました。あるいは、「人間科学を知っていると、会社に入って上司によく思われるにはどうするべきか分かる」とか、「人付き合いの科学」といった言い方にすると、学生がよく集まってくると聞きました。

 それはそうかもしれませんが、学問としてはあまりにお粗末すぎるのではないかと思いました。やはり人間をみる上で、宗教や哲学などとは違った見方が必要だろう、と私は強く思っておりました。


●外科研究に打ち込むことになった経緯


―― なるほど。先生はずっと外科の研究をされていらっしゃるということですので、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹