●第1次反抗期に我慢させるには信頼関係が必要
―― そうすると、まさに先生がおっしゃるように脳の発達段階に応じて、必要なしつけの方法が変わってくると思いますが、まず生まれたばかりのときからだいたい何歳ぐらいまでが第1期と呼べるでしょうか。
井口 まずですね、1、2歳の頃から、第1次反抗期を迎えます。何があっても「これ、どうして?どうして?」、「あれ、ちょうだい。あれ、ちょうだい」と、言うようになります。それはなにも文句を言おうと思っているのではありません。子どもは体を使って生きているわけですが、その前の記憶があって、ただ反射的に言っているだけなのです。それで「ちょうだい」と。そのときに「ああ、何が欲しい。これが欲しい」という願いを全部叶えてやると、逆の現象が起こります。何かが欲しければ、ワーワーわめけば良いと思うからです。
そうではなくて、そのときにしつけとして、「ダメ」「もうこれで我慢しなさい」という必要があります。何をいわれても出さないというと、「うちの母ちゃん、ダメっちゅうたらダメやもんね」といって、自分を抑える。それでしつけができるわけです。そういう点が一番大事です。そして、3歳でだいたい自分の心ができる。
―― だいたい3歳までなんですね。
井口 そうすると、良い子どもであれば、前回話したリリーシングの効果があるのです。完全な信頼関係があると、「これが欲しい、欲しい」といっても、「ダメ、ダメ」と返事があって、それで我慢する。すると、お母さんの機嫌が良くなる。逆にわがままをいったら機嫌が悪くなる。それで、お母さんを喜ばせたいということで、自然に我慢できるようになる。そうすると、そのうちに自分で先取りするようになる。お母さんがいわなくても、「私は我慢したよ」「僕はえらいでしょ」と言う。そして、今度はそれを褒める。そうしたことを経て、今度はしつけで言われたことが自発的に自分でできるようになる。それが目覚めです。
―― それが3歳くらいからですか。
井口 4~5歳くらいからそうなる。自分に目覚めるわけです。
●「温・凛・厳・畏」をうまく組み合わせて、しつけを行う
―― なるほど。先生がおっしゃった、0歳から3歳まで、ないしは3歳から4歳くらいまでという最初の期間、今、我慢のお話がありましたけれども、親としては子どもをどのように育てればよろしいでしょうか。
井口 今いったようなしつけですよ。
―― 例えば、赤ちゃんのときは、おっぱいが欲しいといって泣いたり、オムツが濡れて泣いたり、眠るときや起きるときに泣いたりと、さまざまなパターンがあります。現実問題として、そうしたときに親としてはどのように対応すれば良いのでしょうか。
井口 まず、この世に生まれてきたからには、一日一日規則正しい生活をすることが大事です。何時に起きて、何をしなさいというルールを定めます。ルールとは、現実的には「わがままを抑えなさい」ということですよ。「わがままを抑えなさい」ということで、「何かあったら『わがままを抑えなさい』と。「なんだ、そんな単純なことでいいのか。なんてことないわ」と思っていたら、赤ん坊がまた泣き出すわけです。
そうすると、そこでは温かい愛情の表現としての温、それから凛とした短い言葉でしつけすることです。
―― 温と凛ですね。
井口 凛というときには、しつけをする言葉をいっぺんにバンと出すんじゃなく、前もって「こうしなさい」と普通の言葉でいう。そして4回目くらいに、「これで4回目よ。何回お母さんにいわせるの。ダメやないの」と雷が落ちるわけです。子どもはよく分からんけど、怒られたということは分かるわけです。
―― 例えば、食事の時間を守りなさいというときに、「食べたい、食べたい」といっても、食事の時間は仮に6時だとしたら、「6時でしょう」と何回も教えるということですね。
井口 それが厳しいということです。それから、畏怖、おそれることです。神様が見ていますよという。つまり、「温・凛・厳・畏」というものをうまく組み合わせる。良いと思ったときには、それを行う。怒ったときには、そのままにしていたら感情が働くから、何にもなかったように知らん顔をして、例えば「これ、おいしいよ。食べなさいよ」というとか。すると、後で子どもは「ああ、お母さん、怒っとったね」と思う。
というように、何にしても臨機応変にやることです。これをするには、朝から晩まで子どものことを考えておかないといけない。
―― そうですね。
●5歳になると善悪の評価を伝えることが重要
井口 それで、5歳くらいになると、今度はもう自分の判断で、外からの刺激に対して反応するようになるわけです。親はそれを見て、「あれは良かった。あれは悪かった」と善悪の評価をします。
例えば、...