98歳の医師が明かす「生物学的教育論」
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どんな時もひるまないという心構えなしに人を教育できるか
98歳の医師が明かす「生物学的教育論」(9)自分で自分を教育せよ
井口潔(九州大学名誉教授/日本外科学会名誉会長/医学博士・理学博士)
人間は自己教育の範囲を超えて人を教育することはできない。よって、人を教育するためには、自己教育の範囲を広くしておかなければいけない。それは自分との闘いでもあり、修行ともいえる。よって、他人が強制できるものではない。ただ今の世の中は、自己教育が不足しているのではないか。(全9話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:7分15秒
収録日:2020年1月11日
追加日:2020年8月20日
≪全文≫

●自己教育の範囲を広くしておかなければ、人を教育することはできない


井口 最後に自己教育の話をよろしいですか。

―― ぜひお願いいたします。

井口 山本空外という人がいました。もうだいぶ前の人で、明治に生まれたお坊さんです。この方の書いた本にね、「自分で自分を教育する」とある。

 そうすると、その範囲がありますね。人間はその範囲を超えて他者に教育することは難しいと。人間が他の人間にある教えを施そうとするときには、自分が自分を教育している範囲を超えてはできない。だから、自己教育の範囲を広くしておかなければ、人を教育することはできないと。この指摘には、私はとても心を打たれましたね。

 そうすると、普通は傍観者になるんです。いろいろな悪いことに対して。例えば、子どもが不登校になってキレてしょうがない。それをなおさなければいかんと思うけれど、なおそうとすると自分の自己教育が要りますよ。

―― 教える側の教育ということですね。

井口 具体的なことではなくて、腹の問題です。どういうことになってもひるまんという、その心構えがない人間が、なんで人を教育できますか。そういうことを山本空外が言っているわけです。これに関しては、勉強させられましたね。


●修行は自分に勝つためで、それが教育になっている


井口 お坊さんが編笠を被って顔を隠し、お布施を頂くときに念仏を唱えていますが、こうするしか仕方がないやないかと。人間教育として、どうしようもない情というものの修行をそこでやっている。

―― それはどういう意味でしょうか。

井口 人間教育とは、そんなに簡単にできるものですか。

―― できないですね。

井口 できないでしょう。できないけど、できないからといって、じっとしているわけにもいかない。自分の家でじっとしているよりは、町に出て顔は絶対見せずにブツブツ念仏を唱える。俺に力を与え給えというように、何かせにゃいかん。そのように自分で自分に何かするしか、もうやりようがないやないですか。

―― なるほど。

井口 人に相談するわけではなく、自分と相談する。自分との闘いですよ。自分との闘いに勝てないのに、なんで世界を良くすることができますかということです。

―― 人を変える、あるいは世界を変えるためには、自分との闘いに負けるような人は当然ない。

井口 そう。

―― そう...

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