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道元『辨道話』の教え「修行こそわが仏門」とは

石田梅岩の心学に学ぶ(5)根本としての仏教と道元の教え

田口佳史
東洋思想研究家
概要・テキスト
石田梅岩の思想の根本をさかのぼると、最澄の説く「本来本法性 天然自性身」、またその言葉から修行への疑問を呈した道元に行き着く。最澄は「人間は本来仏性を持つ、生まれながらに悟った身だ」と言う。仏教とはそうした存在への教えだというのだが、道元は「では修行の意味はどこにあるのか」と考えたのである。そこで今回は道元が著した『辨道話』の教えを解説する。(全9話中第5話)
時間:11:27
収録日:2022/06/28
追加日:2024/05/06
キーワード:
≪全文≫

●最澄の言葉に梅岩の淵源をたずねる


 梅岩思想について、その流れの根本はまずどこに尋ねるべきかというと、「(仏法とは)本来本法性 天然自性身」という言葉から始めるべきだと私は思っています。

 これは、伝教大師最澄の言葉です。最澄の言葉というのは、だいたいの僧侶はどういう宗旨であろうと、叡山の横川(よがわ)へ行って修行するのが通例でしたから、だいたいの修行者がそこへ行って接した言葉です。

 横川でまず習うのは、当然ながら「仏法とは何か」ということです。横川といえば叡山、叡山といえば天台宗、天台宗といえば伝教大師最澄です。したがって、最澄のこの言葉は、仏教というのは「本来本法性 天然自性身」というところから始まるのだと言っているわけです。

 これは何を言っているのかというと、「人は本来すでに法性である」。つまり、仏性を持っている。後年、白隠という人が『坐禅和讃』で言っている「衆生みな仏なり」という言葉に通じます。ですから、人間はもう仏である。それから「天然自性身」は。生まれながらにして悟った身なのだと言っています。

 いってみれば、仏法というのは、普通の人間に説くのではなく、もう仏であり、悟りに至った人に対して説くものだということです。万人みんなが仏性を持っている。言葉をかえれば、人間の仏性や悟った部分に対して説いていくのが仏法の根本なのだ、ということをここでまず言っているのです。


●「修行」に対する道元禅師の疑問


 (横川へは)仏教を修行する何千人もの若い人々が山を上ってくるわけで、そういう人は最初にこれを聞くと、「ははぁ、ありがとうございます」と、それなりに納得して修行を進めていったと思います。

 しかし、やはり天才というか、そういう人は違うわけですね。その中でただ一人、この言葉に疑問を持った人がいる。そういうところがまたすごいところで、それが道元禅師でした。道元の言ったのは、「人間が仏で、悟っているのだったら、なぜそういう存在が修行をしなければならないのか」。修行の意味はどこにあるのかということに、とてもこだわったわけです。

 一つひとつをしっかりしていかなければならないというのが道元の性格でしたから、そういうところをなおざりにできない。「そういうものだから」と...
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