石田梅岩の心学に学ぶ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
失敗から学んだ石田梅岩、独学で教養を高めた少年期の体験
石田梅岩の心学に学ぶ(2)梅岩の教養を育んだ少年期の体験
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
江戸の町人の例に漏れず11歳で奉公に出た石田梅岩だが、奉公先の商家の事情から15歳で帰郷する。失敗ともいえるこの体験が梅岩思想に与えた影響は大きいと言う田口氏。郷里へ戻った梅岩が23歳で再び奉公するまでの記録は残っていないが、この期間が梅岩の教養を育んだのではないか。梅岩の一途な性質と郷里の風土は、勉学に励むのに最適の組み合わせだったのだろう。(全9話中第2話)
時間:11分01秒
収録日:2022年6月28日
追加日:2024年4月15日
≪全文≫

●失敗の体験~うまくいかなかった最初の丁稚奉公


 (石田梅岩の生涯年表の)中身をちょっと見ていただきますと、まず生まれて、11歳のところに「奉公に出る」とあります。奉公に出るのですが、実は出た先が非常にうまくいかない商家でした。

 普通「お仕着せ」というのは、盆暮に丁稚が自分の家に帰るときに雇い主が着せる晴れ着です。「これだけお宅の息子さんを大切にしていますから、ご安心ください」といえるものを着せ、ちょっとした土産物を持たせて帰らせる。そのため、丁稚のほうも鼻高々で、ちょっと大人になった気分で帰ります。

 (梅岩が)11歳で奉公に出て15歳で辞して家に帰るまでの4年間、少なくとも3回の盆暮れがあったはずですが、(彼は)出ていったときのままの薄汚れた着物で帰ってきました。これは親も不審に思い、「おまえ、どうしたのだ」、暗に「うまくいっていないのではないか」と訊いても、(息子は)「いや、そんなことはありません。ご心配ご無用で」と言って(奉公先へ)帰る。

 ある日、その家を斡旋してくれた父親の友人が訪ねてきて、「いやあ、申し訳ないことをしました。(奉公先の商家が)あんな家だとは知らなかった。(商売が)全然うまくいかないで、借金がどんどん重なって、まともに丁稚の面倒をみられないような状況です。即刻どこか違うところにご紹介したいと思う。どうかとりあえず1回家へ帰してください」。そのような非常に貧しい、うまくいかない商家が彼のスタートだったということです。

 キャリアを積むというのは、成功の体験もさることながら、失敗の体験が非常に重要です。そういう意味で、梅岩が一番最初に「商家はこうあってはいけない」という商家をつぶさに知ることができたのは、その後の梅岩教学からいっても、とても重要なことだと思います。まず、ここを挙げておきたいと思うわけです。


●頑固で融通が利かず、一直線な梅岩の性質


 梅岩の性格をあらかじめ申し上げておくと、子どもの頃からとても理屈っぽい男でした。だから、友達から嫌われた。俗にいう「嫌な奴」で、友達が何気なく言ったことに対しても、「それは、こういう点で理屈に合わない」などと議論を吹っかけてくるような「嫌な奴」だと、自分で言っています。

 嫌われ者だったので、「これはいかん」と思い、成人してからどんどん直し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験
鎌田東二
【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(1)名僧の原著に触れる意味
「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
賴住光子
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
第2の人生を明るくする労働市場改革(2)前提が崩れた日本的雇用慣行
日本人全員ではない…日本的雇用慣行のターゲットは誰?
宮本弘曉
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子