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東大で行われているセンターオブイノベーション

AIに善悪の判断を教える方法(1)自分で守る健康社会

鄭雄一
東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授
情報・テキスト
少子高齢化に伴って、自分で守る健康社会が必要となる、というのが鄭雄一氏の見立てである。そのためには、健康リテラシーをあげ、仲間をつくり、個人の行動が変わっていくことが重要である。鄭氏が、そのためにどのような技術と道徳が必要かを講じる。(全8話中第1話)
≪全文≫

●少子高齢化社会の鍵は個人の行動の変容である


 東京大学工学系研究科の鄭雄一です。今回は、「AIに善悪の判断を教える方法」ということで講演します。副題は「多様性と道徳性」です。そこに本がいくつかありますが、これまでに出してきたもので、この左右の2つが以前に出したもので、10MTVオピニオンの中でも以前紹介したもので、これが英訳です。今回は新しくAIについて書いています。この内容は同じく東京大学の光吉俊二先生と一緒につくったものです。

 私が今、東京大学でやっているセンターオブイノベーションに協力しています。このセンターオブイノベーションの名前を「自分で守る健康社会」といいます。どうしてこのような名前になったか、お話しします。

 現在のわれわれのマインドセットは、日本は国民皆保険が大変発達していて、いつでもどこでも安く病院にかかることができ、大変素晴らしいことでしたが、逆にわれわれがそのようなシステムに依存する状態を生み出しました。つまり、われわれは今、病気になったら病院に行けばいい、若者が高齢者を支えるのだと思うようになったということです。

 その一方でわれわれは、少子高齢化で増える高齢者医療費を削減したいという、全ては両立し難いような望みを持っています。日本のこれからの人口動態を見てみますと、グラフの最後は2059年ですが、高齢者の人口は4000万人で全然変わりません。しかし、人口自体は3分の2になってしまい、今のマインドセットでは日本が立ち行かないことは、明らかです。

 そこで、われわれがまず考えてみたのは将来社会ニーズです。それは、自分の健康は自分で守る、そして高齢者も社会を支えるということです。逆にいうと、高齢者や若年者という区別は、多分なくなるのではないでしょうか。そのときに、ただお金を減らすのではなく、新しい医療産業を起こしてGDPを上げていくということです。

 キーとなるのは、個人がそれぞれの行動を変容させていくということです。つまり、そすれば、「行動変容を推進できる社会」が回るようになるのではないかということです。


●自分で守る健康社会


 では「自分で守る健康社会」という、われわれの拠点についてですが、その内容を3つに分かれます。“入院を外来に” “外来を家庭に” “家庭で健康に”、この3つです。

 “入院を外来に”は、主に医療技術革新ということで、日帰り治療に力を入れています。今まで10日や1カ月入院しなくてはいけなかったものを日帰り治療にします。その中で一番重要なのは内視鏡だろうということで、非常に革新的な血管内視鏡を使って、冠動脈の予防や早期発見、あるいは低侵襲治療ができるものを今、開発しようとしています。

 “外来を家庭に”ですが、疾患予防対策では糖尿病に力を入れています。特に糖尿病性腎症です。糖尿病性腎症ですが、今は透析に莫大なお金が使われていますが、これをどうにか減らしたいのです。早く予後を予測して、悪くなりそうな人にはICTを使って、強力にサポートするということです。また、ゲノム解析などの、次世代の予防医療を使うことを目指したこともやるということです。

 3番目の“家庭で健康に”は、健康リスクの可視化です。健康リスクは未病ともいうのですが、ストレスやメタボなどのような未病の状態を早期に発見し、可視化して、見える化します。そうすることで健康の自分ごと化をしていこう、ということです。

 われわれとしては、この3つの技術開発の柱があります。その全てを支えているのが、健康医療ICTの標準化です。われわれが持っている健康医療のデータ、特に電子カルテですが、こういうものを標準化していきたいのです。これは「SS-MIX2」という仕組みを利用して行いたいと思っています。

 全体について非常に重要なのは、次のことです。それは、病気、健康の二分論では駄目で、病気と健康は連続しているということです。それを未病といっているわけですが、そのとき、われわれがこのどこにいるかということと、またどこにいても改善余地があるということをわれわれが認識して、自分で努力することが大切だと思っています。


●行動変容戦略


 ではどうやって行動を変えていくかですが、われわれの戦略を示したのが、このスライドです。緑の部分をご覧ください。非常に分かりやすい研究開発です。先ほど申しましたように、ビッグデータやAIを使って、個人の将来の健康リスクを予測するわけです。それが数字で出てきますが、数字だけだと人間はなかなか変わりませんので、AR(オーグメンテッドリアリティー)、あるいはVR(バーチャルリアリティー)...
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