AIに善悪の判断を教える方法~新しい道徳論
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
道徳次元の計測、可視化のためのロバストな方法
AIに善悪の判断を教える方法~新しい道徳論(7)道徳次元の計測・可視化
哲学と生き方
鄭雄一(東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授)
道徳の次元が高いか低いかは、どのように計測できるのだろうか。鄭雄一氏は、これを可能にするために「異質・未知だが危害のない対象」を見せる方法を生み出している。具体的にどのようなものか、道徳次元が計測可能になると、どのような未来が生まれるのだろうか。(全8話中第7話)
時間:8分06秒
収録日:2018年6月20日
追加日:2019年7月10日
≪全文≫

●道徳次元3以下と4の人の違い


 もっとロバストな道徳次元の計測・可視化ができるかについては、一番大事なのは道徳次元4という最高次元が測れるかということなので、ここに絞って議論をしたいと思います。

 例えば、ここに道徳次元3以下の人がいます。この人が観測者だとすると、この人は自分の頭の中で、共通のおきてと個別のおきてがごっちゃになってしまっているわけです。定義上そうなっています。そういう人たちが、例えば他の文化の人から来た人を見たとすると、その人の共通のおきてと個別のおきてもごっちゃになって見えます。そうすると、自分は赤で、あいつは緑で違うからと、反感を覚えて仲間ではないと思ってしまいます。

 ところがもしここで、先ほど言った仲間らしさのデュアリティ、個別のおきてと共通のおきてに気付くことができるようになるとします。レンズのようなもので拡大してみると、実はこれは市松模様のようになっていて、中には赤の個別のおきてと黒の共通のおきて、相手も緑の個別のおきてと黒の共通のおきてでできていることが見えるようになります。

 そして、共通のおきての一般性と個別のおきての多様性を認めることができれば、この個別のおきては、多様なのが当たり前だと理解されます。そして共通のおきてさえ守れば、仲間になれると思えることになります。これが道徳次元4であると思います。

 そうすると、どうやってこの心の多様性、寛容性が計測できるかが鍵になります。


●絵を使って心の多様性・寛容性を測定する-道徳次元3以下の場合


 ここに、プロトタイプですが、心の多様性、寛容性の測定方法を示します。これはすでに実験をして、ある程度データが出ることを確認しているものです。例えば、観測者に「異質・未知だが危害のない対象」というものを見せます。それがどういうものか分かりにくいと思いますが、具体的には今は、非常に前衛的な芸術、絵を見せています。あまり皆さんが見たことのない、でも傑作といった絵があるのです。私は絵が昔から好きでずっと描いてきたので、いろいろ集めてあるのですが、それを見せます。

 そうすると、道徳次元3以下の人の場合、共通のおきてと個別のおきてが混在しています。ですから、当然異質・未知のもの見れば誰でも不安や恐...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(1)名僧の原著に触れる意味
「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
賴住光子
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮