進化生物学から見た「宗教の起源」
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか…脳の働きで考える
進化生物学から見た「宗教の起源」(3)集団の種類・サイズと宗教の関係
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
宗教の起源をめぐる研究の中に、「高みから道徳を説く神」など6つの要素について分析したものがある。人間の営みが狩猟採集中心の社会から「農耕・牧畜・定住・階層」社会へ変化すると、宗教にも大きな変化が訪れる。集団のサイズがダンバーの考えたヒトの脳の限界“150人”を超え、お互いの声が届かなくなったことで「高みから道徳を説く神」が必要になったというのだ。そこで最終話の今回は、宗教集団と世俗的集団それぞれのサイズの限界とあり方、宗教による内集団の結束などの解説を進めながら、進化から見た宗教の心的基盤に迫る。(全3話中第3話)
時間:14分22秒
収録日:2023年12月20日
追加日:2024年2月13日
≪全文≫

●農耕・牧畜・定住・階層社会と「高みから道徳を説く神」


 先ほど(前回)お話ししたように、宗教の起源を探るとアニミズムが一番古く、シャーマニズム、祖先崇拝、死後の世界への信仰、特定の場所に何か神様がいるという信仰、それから“お前たちはこうしないとならないのだ”というように「高みから道徳を説く神」など、そういう6つの要素が33の部族社会にどのように分布しているかという研究があります。Peoples and Marrowなどによる研究です。

 研究によるとアニミズムが一番古く、死後の世界への信仰やシャーマニズム、祖先崇拝は、アニミズムより後で急速に、また一緒に進化してきたようだということです。

 一方、「高みから道徳を説く神」というのは、狩猟採集社会には存在しません。狩猟採集社会では、みんなで「何をしてはいけない」「何をしたらいい」ということが普段の生活の中で自然に出てくるので、「これは絶対にしてはいけないと神様が言っています」というようなものはないのです。

 それが出てきたのは、どうも「農耕・牧畜・定住・階層社会」になってからのようです。農耕・牧畜などで定住すると、財産ができて階層もできている。みんなで一緒に働かなければいけないのに、ズルをする人がいる。しかし、小さい社会ではないので、お互いに顔見知りで「駄目ですよ」というような声はもう届かない。

 そういうときに、ズルをしたり悪いことをしたりする人を、全体が共有する概念として、偉い神様が「それはいけない」と言っているというようにする。つまり、「ズルをするフリーライダーを、特に何とかしなければいけない」という問題に対処する必要から、「高みから道徳を説く神」の存在が出てきたのではないかと、彼は分析しています。私もそうだと思います。

 大集団で共同作業をするというのは、狩猟採集社会ではあまりなかったことです。「牧畜・定住・文明」を行うということは大集団がやらなければいけなくて、そういう集団をうまく回すためには非常に強い道徳や倫理が必要になったわけです。

 そこで、偉い神様による宗教的説明で、「やっていいことと、いけないこと」をきちんと言うことが必然的に大事になったのではないでしょうか。

 なので、道徳や価...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
もっと知りたいイヌのこと(1)イヌの歴史を振り返る
オオカミはいつイヌになったか…犬の起源と家畜化の歴史
長谷川眞理子
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
資本主義の再定義…哲学で考える(4)共感としての見えざる手
利とは、義の和である…なぜ道徳的なふるまいが企業活動に重要か
中島隆博
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(1)軍人の本義を貫いた根本博中将
ソ連軍から在留日本人4万人を守れ…内蒙古での「戦後」の激闘
門田隆将
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
戦前派一日本人の憂鬱~太平洋戦争と敗戦後を顧みて…(1)
『きけわだつみのこえ』を読むと今でも涙が止まらない
野田一夫
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(1)なぜ『神国日本』なのか?
ラフカディオ・ハーンが解明した「美しい日本」の秘密と未来
賴住光子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保