この講義シリーズの第1話は
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進化的人間考~ヒトの性質と異様な現代社会
時計とカレンダーが支配する現代社会とストレスの問題
進化的人間考~ヒトの性質と異様な現代社会(3)近未来の情報革命に対する提言
科学と技術
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長)
ヒトは本来の進化環境における基本的欲求を満たしながら、文明社会を形成してきた。産業革命によってヒトも社会も大きな変化を遂げ、この百年余りの社会ではカレンダーと時計がヒトを支配し、貨幣が全てに介在するようになった。また、昨今の情報革命とエネルギー革命はヒトと社会にさらに大きな変化をもたらすだろう。ではこれから私たちはどのように考えて行動すればいいのか。最終話は、近未来の情報革命に対する提言をして締めくくる。(全3話中第3話)
時間:10分57秒
収録日:2024年6月12日
追加日:2025年1月31日
収録日:2024年6月12日
追加日:2025年1月31日
≪全文≫
●ヒトの本来の進化環境と貨幣による急激な変化
ここで、(話は)ずいぶん「現代社会の異様さ」に近づいてきたのですが、本当にいろいろな意味で変わってきたわけです。(本来のヒトは)高エネルギーで高栄養な多様な食物を食べている。学習に依存した、高度な技術による食料獲得がある。学習の結果を大量に知識として伝承しなければいけない。子どもが大人に依存する期間が長い。こうしたことは変わっていません。これらに対処するために、いろいろな装置や安い食料をつくり出してきたので、われわれの住んでいる環境は変わっています。しかし、基本がこうであるという点は、なんら変わっていないわけです。
その結果、高エネルギー、高栄養の多様な食物を食べたい、甘いものはおいしい、というようなことで、どんどんそういうものを安く生産することにしたため、逆にメタボになっている。それから、学習に依存した高度な技術による食料獲得をするというのが、何か分業の仕事をもって就職をして、お金を稼がなければいけないということになった。その分業があまりに高度すぎて、「何か一つの職業を選びなさい」というようになってくるわけです。
その後のいろいろなことも、そういう基本的な欲求に対して、どうすればうまく適応環境を整えられるか、楽に解決できるかについて頭を絞って考えた結果、少子高齢化をはじめとするいろいろなことが起こっているということです。
●科学技術の発展は社会とヒトを変える
そして、ここ100年余りでしょうか、本当に大規模な貨幣経済と市場経済になったので、「すべてが金」ということで回さないといけなくなった。これは、一つのトラップのようなものだと思います。
昔は、ごくわずかな短さをさかのぼる戦前ぐらいの時代でさえ、お金に頼らず、「ちょっとお醤油をきらしてしまった。お隣さん、貸してください」ということもありました。しかし、今やそういうことは全くない。それが、コンビニで小さなお醤油を売っていることにつながるのかもしれません。全ては貨幣経済・市場経済であり、お金を媒介にして何かを動かさないと始まらないということです。
その上、分業があまりにも進みすぎて、いろいろな職業がありすぎる。15歳~18歳と...
●ヒトの本来の進化環境と貨幣による急激な変化
ここで、(話は)ずいぶん「現代社会の異様さ」に近づいてきたのですが、本当にいろいろな意味で変わってきたわけです。(本来のヒトは)高エネルギーで高栄養な多様な食物を食べている。学習に依存した、高度な技術による食料獲得がある。学習の結果を大量に知識として伝承しなければいけない。子どもが大人に依存する期間が長い。こうしたことは変わっていません。これらに対処するために、いろいろな装置や安い食料をつくり出してきたので、われわれの住んでいる環境は変わっています。しかし、基本がこうであるという点は、なんら変わっていないわけです。
その結果、高エネルギー、高栄養の多様な食物を食べたい、甘いものはおいしい、というようなことで、どんどんそういうものを安く生産することにしたため、逆にメタボになっている。それから、学習に依存した高度な技術による食料獲得をするというのが、何か分業の仕事をもって就職をして、お金を稼がなければいけないということになった。その分業があまりに高度すぎて、「何か一つの職業を選びなさい」というようになってくるわけです。
その後のいろいろなことも、そういう基本的な欲求に対して、どうすればうまく適応環境を整えられるか、楽に解決できるかについて頭を絞って考えた結果、少子高齢化をはじめとするいろいろなことが起こっているということです。
●科学技術の発展は社会とヒトを変える
そして、ここ100年余りでしょうか、本当に大規模な貨幣経済と市場経済になったので、「すべてが金」ということで回さないといけなくなった。これは、一つのトラップのようなものだと思います。
昔は、ごくわずかな短さをさかのぼる戦前ぐらいの時代でさえ、お金に頼らず、「ちょっとお醤油をきらしてしまった。お隣さん、貸してください」ということもありました。しかし、今やそういうことは全くない。それが、コンビニで小さなお醤油を売っていることにつながるのかもしれません。全ては貨幣経済・市場経済であり、お金を媒介にして何かを動かさないと始まらないということです。
その上、分業があまりにも進みすぎて、いろいろな職業がありすぎる。15歳~18歳と...
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