●ヒトの本来の進化環境と貨幣による急激な変化
ここで、(話は)ずいぶん「現代社会の異様さ」に近づいてきたのですが、本当にいろいろな意味で変わってきたわけです。(本来のヒトは)高エネルギーで高栄養な多様な食物を食べている。学習に依存した、高度な技術による食料獲得がある。学習の結果を大量に知識として伝承しなければいけない。子どもが大人に依存する期間が長い。こうしたことは変わっていません。これらに対処するために、いろいろな装置や安い食料をつくり出してきたので、われわれの住んでいる環境は変わっています。しかし、基本がこうであるという点は、なんら変わっていないわけです。
その結果、高エネルギー、高栄養の多様な食物を食べたい、甘いものはおいしい、というようなことで、どんどんそういうものを安く生産することにしたため、逆にメタボになっている。それから、学習に依存した高度な技術による食料獲得をするというのが、何か分業の仕事をもって就職をして、お金を稼がなければいけないということになった。その分業があまりに高度すぎて、「何か一つの職業を選びなさい」というようになってくるわけです。
その後のいろいろなことも、そういう基本的な欲求に対して、どうすればうまく適応環境を整えられるか、楽に解決できるかについて頭を絞って考えた結果、少子高齢化をはじめとするいろいろなことが起こっているということです。
●科学技術の発展は社会とヒトを変える
そして、ここ100年余りでしょうか、本当に大規模な貨幣経済と市場経済になったので、「すべてが金」ということで回さないといけなくなった。これは、一つのトラップのようなものだと思います。
昔は、ごくわずかな短さをさかのぼる戦前ぐらいの時代でさえ、お金に頼らず、「ちょっとお醤油をきらしてしまった。お隣さん、貸してください」ということもありました。しかし、今やそういうことは全くない。それが、コンビニで小さなお醤油を売っていることにつながるのかもしれません。全ては貨幣経済・市場経済であり、お金を媒介にして何かを動かさないと始まらないということです。
その上、分業があまりにも進みすぎて、いろいろな職業がありすぎる。15歳~18歳と...